novel
□Scar of tears
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生き返ってからしばらくして、悟飯から自分が死んだ後の事を聞いた。
悟飯は話したがらなかったけれど、悟空はそれを受け止める事も自分の義務だと、無理矢理悟飯に話させたのだ。
その時に聞いた自分が死んだ直後のチチの様子に、自分の犯した罪の大きさを知った。
悟空の死を知らせた直後、チチは床に突っ伏して号泣し、悟飯を抱き締めて泣いた後、気を失った。
目覚めてもただ窓辺に佇んでいた。何も口にせず、誰の言う事も耳に入らず、ただただ、窓辺に佇んで……。
そして、時折その瞳には涙が溢れていた。
今、正にその状態で……。
「……チチ……」
悟空はチチを抱き締める力を強めた。
自分がしてしまった事で、チチは一時期精神を病んでしまったのだ。
一番守らなければならないチチを、一番傷付けたのは自分だ。
7年経っても、こうして自分が戻って来ても、チチの負った大きな傷はまだ癒えてはいないのか。
……それだけ、チチの負った傷は大きすぎた。
きっとチチは不安なんだろう。また自分がいなくなるのではないかと…。その不安はこういう形であらわれてしまったのか……。
「……すまねえ……すまねえ、チチ……」
悟空はチチを抱き締め、そして涙の痕に唇を落とす。
自分の罪は決して消えない。消える事はない。
ひょっとすると、チチの傷も一生癒えないのかも知れない。
それでも、自分の罪と共にチチの傷を背負うのが、自分が今すべき事。
「……オラ、もうオメエの事、一生離さねえかんな……」
チチの唇に誓いのくちづけを落とす。
明日目覚めた時、元のチチに戻ってるだろうか?
いや、きっと元のチチに戻っている。
チチは母親だから……。
だけど、本人も気付いていないだろうその胸の奥に根付く闇は、子供達にもチチ本人にも取り除く事は出来ないだろう。
それは自分にしか取り除く事が出来ない。
どんなに時間がかかっても、絶対に取り除いてみせる−。
月明かりが君の横顔を照らす。
月の雫が落ちたような涙の痕が、
自分の過去の過ちを責めているように感じた。
だけど、もう二度とその涙が流されないように、
自分が心の傷を癒していくから―。
end