novel

□Moment not forgotten
2ページ/2ページ

 


 ピンク色の空の下、昼寝をしていた悟空は目を覚ました。

 何となくけだるく、重い身体を起こす。


「悟空」

 界王はタイミングを見計らったように姿を現した。

「やっと起きたか……どうした?」

 悟空は茫然と座り込んだまま、微動だにしない。

 界王は何かを察したように黙ったまま、悟空を見ていた。

 すると、悟空は静かに口を開く。


「……懐かしい夢を見たんだ……」


 その顔をどこか寂しそうな、それでも幸せそうな顔をしていた。

「……どんな夢だ……?」

 界王は問うた。


 悟空は少し間を空けて言った。


「……悟飯がさ……生まれた時の夢……」


 地面を見つめながら―。


「……そうか……」

「それより界王さま、オラ腹減ったぞ!!」

 悟空は何かを誤魔化すように、いつものように能天気に言った。

「何だ、相変わらず変わった死人だな」

 界王は呆れたように言った。

「いいじゃねえか!!」

 屈託無く笑う悟空。



 でも、界王は悟空の目に少し光るものが浮かんでいたのを見逃さなかった。


(そんな夢を見るとは……やはり通じるものがあるのだな)
 

 界王は地上に視線を落とした。
 

 そして微笑むと、立ち上がり先を歩いて行く悟空の後を追った。





 ちょうど時を同じくして、地上では一つの命が誕生した。

 天にも届くような、輝きを放つその命に付けられた名は―

 孫悟天―。


 end



          
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ