novel

□Eternal oath
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「チチ?」

 悟天を寝かしつけた後、悟空がリビングへやって来ると、いつもいるはずのチチがいない。

 風呂でも入っているのだろうか?だがそんな気配はない。

 台所はもう綺麗に片付いており、明日の朝食の下拵えも済んでいる。

 途端、悟空は不安になった。

 新婚の頃、些細な事でチチが出て行き、それ以来チチがいなくなると不安がった。

 ましてやこんな遅い時間だ。

 何かあったのかも知れないと、胸がざわつく。

 
 悟空は超化しチチの気を探ると、瞬間移動をした。


 悟空が姿を現した所は暗闇だった。
 
 自分が発する光が暗闇を照らしている。

「チチ?」

 妻の名を呼びかける。

 妻の気を探って瞬間移動したのだからここにいる事は間違いない。

「悟空さ?」

 暗闇向こうからチチの声がした。

「何してんだ? こんなトコで」

 悟空はチチの傍に立つ。

「また超サイヤ人だべか」

 チチはムスッとしながら悟空を睨みつける。

「ヘヘッ、すまねえ」

 悟空はいつものように苦笑しながら詫びた。

「でもいいだよ。今日は」

 チチはそう言って微笑んだ。


 自分の発する光に照らされて美しく微笑む妻に、以前にも感じた、言いようの無い妙な気持ちが込み上げてくる。


 ……それはとても居心地が悪くて……。

「……オメエ……こんなトコで何やってんだ……? 一人で危ねえだろ」

 いつもの悟空らしからぬ、深刻な声音で言った。

「……蛍……」
「え?」

「蛍を見に来ただよ……」


 そう言ったチチの視線の先には無数の蛍が飛び交っていた。


「……ここ……」

 暗闇でよくわからなかったが、ここはあの祖父の秘密の場所だった。

「……オメエ……一人でこんなトコまで来たんか?」
「んだ。毎年来てただよ……だっておらと悟空さの思い出の場所だもの」
「……チチ……」


「……ここに来ればおめえに会える気がしたんだ……だからこの時期子供達が寝静まってから、よくここへ来てただよ」

 そう微笑むチチの横顔はこの世のものとは思えないくらい美しかった。

「今日も急に来たくなってな。黙って出て来て悪かっただ」

「……」

 悟空は何も言えなかった。この妻にこんなにも寂しい思いをさせていたという事に罪悪感が込み上げてきた。

「おら嬉しかったんだべ。悟空さと悟飯様の秘密の場所なのに、おらを連れてきてくれて」

 チチは蛍を見つめたまま言った。

「……思い出があったから、今まで生きてこれたんだべ……」
 

 悟空は胸が熱くなった。


 そして、暗闇の中、自分の発する光に照らされたチチの横顔に、あの時二人で初めてここへ来た時に感じた不安を感じた。

 先程の居心地の悪いような妙な感覚はこれだった。

 悟空はたまらずチチのか細い身体を抱き締めた。

「……悟空さ……?」

 チチは悟空のいきなりの行動に驚いた。


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