novel

□Throbbing of heart
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「ねえ悟飯君」


 舞空術を教えろと自宅にまで押しかけてきたクラスメートが唐突に口を開いた。

「何ですか? ビーデルさん」
「悟飯君のパパってどんな人?」
「へ? お父さんですか?」 

 いきなり何だろうと少し驚いて、向かいに座る彼女を見る。

「ええ。パパの前のチャンピオンだもの。どれだけ強かったか興味があるわけよ。まぁパパには劣るでしょうけど」

 自慢気に言う彼女だけれど、きっと君のお父さんより君の方が強いと思うよ。なんて言えやしないな……。

「……お父さんですか……? そうだなぁ……」

 一緒に舞空術の練習をしている弟の方を見やる。

 弟は見つけたバッタを追いかけて遊ぶのに夢中のようだ。

「お父さんは……すごく強かったです。……それでいて、空みたいな人でした」

「空?」

 彼女はキョトンとして僕を見ている。

「ええ。何て言うのか、こう、全てを包み込むような……あたたかくて優しい人でした……」

 その瞬間、お父さんの最期を思い出してしまった。

「悟飯君?」
 黙り込んだ僕に、彼女は不思議そうな顔で覗き込む。

 一瞬、彼女のその大きな目に吸い込まれそうな錯覚に陥った。

「な、何でもないです!!」
「?」
 
 彼女はキョトンとした顔で僕の顔を見ている。

 僕は今どんな顔をしているんだろう?すごくドキドキしてるんだけど……。

「まいっけど。ねえ、君のパパがいなくなったのって女の人と逃げちゃったの?」
「へ? ち、違いますよっ!!」
「そうなの?」

 何でそうなるんだろう?

「私のパパっていつも女の人と遊んでるのよね。もうそりゃ呆れちゃうくらい」
「……へえ……そうなんだ……」

 前にも言っていた気もするけど…こういう事って何ともコメントしづらいなぁ…。

「私、男の人全員がそうじゃないとは思うけど、奥さんがいるのにいなくなっちゃったって女の人と出てっちゃったのかな? って思っちゃったのよね。そうじゃないならごめんなさい」

 彼女、お父さんが失踪したって勘違いしてるんだよなぁ……。確かに死んだけど一日だけ生き返るんですって言ったって普通は信じないよな。

 まあ前にそう言った時には信じて貰えなかったから家出した事になってるんだけど……。

「僕のお父さんは女の人には全然興味が無い人ですから」
 僕は苦笑しながら言った。

「へえ……そんな人もいるんだ。でも結婚してるじゃない? 悟飯君も悟天君もいるし」
「お母さんだけは別ですよ」 
 
 そう。お母さんだけは別。特別。

「お父さんはお母さんの事が本当に大好きですよ。あんまりお母さんの前では態度に出さなかったけどね」


 きっと今も……。

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