novel

□Throbbing of heart
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「ふーん……でも女としてはいつも好きって態度で示して欲しいな」

 そう言う彼女は伏目がちで、顔も少し赤い気はする。


 ……何か……かわいいな……。

 ……って……え? 僕何を…?

「……そ、そういうもんなんですか……?」

 ちょっと誤魔化すように言った。 

「そりゃそうよ!! 好きな人に好きって言われる事ほど幸せな事って無いわ。君のママだって…きっとそうよ。……私だって……」

 赤い顔で見上げてくる彼女は、いつもの気の強い彼女のイメージとはずいぶん違うものだった。

 いつもは僕を圧倒する勢いを持つ彼女がこんなにもかよわい女の子に見える。

 元々魅力的な彼女だけど、こういうギャップが更に魅力的にしている気もする。

 そんな風に考えていたら、何だかドキドキしてきた。

 何だろう……? この感覚は……?

「悟飯君? どうしたの?」

 彼女は僕の顔を覗き込んだ。

 その瞬間、顔が火を噴いたように熱くなった。

「な、何でも無いですよ!! そろそろ練習に戻りましょうかっ!!」

 僕は慌てて立ち上がった。

「? ……うん」

 彼女はキョトンとした顔で僕を見上げている。

 この妙な胸の高鳴りは何なんだろう……?

 お母さんに聞いてみようかと思ったけれど、何となく聞けない気がした。

 今度、お父さんが帰ってきた時に聞いてみようか?

 お父さんなら、この気持ちが何かわかるかも知れないと思った。

「悟天、始めるよ」
「うんっ!!」

 弟はお父さんそっくりな笑顔で返した。

 早くお父さんに会いたい。

 早く弟にお父さんを会わせてあげたい。もちろんお母さんにも。

 お父さんに聞きたい事もたくさんある。

 こういう時はどうしたらいいのかとか、お母さんには聞けない事をお父さんに聞いてみたい。

 ただお父さんの事だから、他人とはちょっと違うのかも知れないけれど。

 でも僕の知らないお父さんとお母さんの話とかも聞いてみたい。

 
 僕がこの感情が何かを知るのは、もう少し先の事―。


 end



       
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