novel

□手を繋いで〜孫家ver.〜
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「おとうさん、手繋ご?」

 次男坊が自分を見上げて手を差し出してきた。

「おう!!」

 自分はその小さな手を繋ぐ。

 自分が死んでいた間に生まれた息子は、自分が生き返った今、こうして慕ってくれる。

 それがとにかく嬉しかった。

「よかったな、悟天」
「えへへ!!」

 嬉しそうに笑う次男に、小さかった頃の長男の姿が重なる。

 今日は学校が休みだと一緒に修行に来た長男も、今ではもう高校生。背丈も自分と変わらない。

 死に別れた時はこの次男よりか何歳か年長だったくらいか。

 この長男の成長振りが会えなかった時間の長さを示していた。

 その途端、何だか申し訳ない気持ちになった。

 それと同時にある衝動に駆られた。

「悟飯、手ぇ出せ」
「何ですか?」

 キョトンとして訪ねてくる長男の顔は、大きくなっても幼い頃と変わらない。

「手ぇ繋ぐんだよ」
「えっ!? いっいいですよっ!!」

 慌てふためく長男。

「いいからいいから!!」

 笑いながら長男の手をとる。

「わあ!! にいちゃんも一緒だね!!」

 嬉しそうに笑う次男。

 長男の手は随分と大きくなった。あの小さかった手は、今はこんなにも大きな手になった。

 もう何かを守る手なのだ。

 横目で長男を見ると俯いて真っ赤になっている。まぁ夕日のせいだとしておいてやろう。

 瞬間移動で帰る事も出来るのだが、こうして親子並んで帰るのも悪くはない。

 きっと遅くなっても妻は許してくれるだろう。


 
 久しぶりに握った父の手は相変わらずあたたかかった。
 
 でも恥ずかしくて顔を上げられない。

 だから余計に父の手のあたたかさが伝わってくる。

 手の冷たい人の方が心が優しいって言うけど、そんなの関係ないと思う。

 でも母の手はいつも家事をしてるからか少し冷たいような気がする。

 熱を出した時とか、身体が火照った時とか、触ってくれるとすごく気持ちがいい。

 でも、寒い時や辛い時の母の手は妙に温かく感じるのは不思議だ。
 
 家事の為に少し荒れてしまっているけど、とても優しい、大好きな手だ。



 それにしても父の手はこんなに小さかったっけ?

 ああそうか。僕が大きくなったんだ!!

 そう腑に落ちて顔を上げて父の方を見ると、父は微笑んで頷いた。

 その横を見ると弟が嬉しそうに繋いでいない方の手を大きく振りながら歩いている。

 弟にとって僕の手は安心できる手だっただろうか?

「おとうさんの手もにいちゃんの手とおんなじ!! おっきくてあったかい手だね!!」
 
 そう見上げて言ってきた。

「そっか? 兄ちゃんの手とおんなじか。そりゃ父さん嬉しいなあ!!」
「うん!!」

 そっくりな親子はそっくりな笑顔で笑い合った。

 僕は泣きそうになった。

 この大きな手で守られた事を。小さな手を守れた事を。この大きな手になれた事を。

 こんなに嬉しく思う。

 これからは父の大きな手が、この小さな手と優しい手を守ってくれる。

 僕にはもうひとつ、守りたい手が出来たから。

「それにしても腹減ったなあ。」
「そうだねえ」
「お母さん待ってますよ」


早く帰ろう。夕暮れの中の帰り道。
家の前で待っててくれる人がいるから。

でももう少し。
このままこの温もりを感じていたい。


 end



       
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