novel

□手を繋いで〜悟チチver.〜
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「なあ、チチ。オメエ最近手繋ごうって言わねえな」

「何だべ?いきなり」

 妻がキョトンとして鏡越しに自分を見る。

「だってオメエ、昔はすぐ手ぇ繋ぎてえって言ったじゃねえか?」

「……あの頃はまだ……」

 歯切れ悪く呟く妻。

「何だ?」

「だから……あの頃は……まだ手もキレイだったべ……今はもう……皺くちゃのおばあちゃんの手だからな」


 そう寂しそうに呟く妻。


「今もキレイだぞ」

「お世辞はいいだよ。もうボロボロの手だべ」

 
 そう寂しげに笑う妻がどうしようもなく愛しくなった。

「何言ってんだよ……オメエの手は世界一……いや、宇宙一の手だ」

 妻の傍に寄り、妻の手をとる。

「オメエは二人も子供を育てたんだ……オラのせいで7年間も一人で……それにオラみたいなヤツの面倒もみて、メシもいっぱい作って……オメエの手は誰にも負けねえ手だ!!」
「悟空さ……」

「みんなオメエの手が大好きなんだ。オラも悟飯も悟天も、それにビーデルもパンも、みんなオメエの手が大好きなんだぞ」

 そう言って妻の手にキスをする。

 この手の皴が一本一本が、この手のあかぎれの一つ一つが、この手の全てが、この家の歴史なのだ。

「でえ好きだぞ、チチ」

 そう言って今度は妻の唇にキスをする。




 自分は一度ならず二度も、この手を離してしまった。

 あの時の後悔は今も残る。

 今度はこの手を離さない。

 もう二度と、この手を離してなるものか。

 もう一度、この手に誓いのキスを。




今度こそ、自分からこの手をとる。

二人で手を繋いで歩こう。

永遠に。二度と離さぬように―。


 end



       
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