novel
□孫家のある週末
1ページ/3ページ
パオズ山の白いカプセルハウス。
ここに訪ねて来たのは黒髪の少女。
「こんにちはぁ。ビーデルです」
扉の向こうからバタバタと駆けてくる音が聞こえる。
扉が開くとそこにはピョンピョン跳ねた黒髪の少年。
「いらっしゃい、おねえちゃん!!」
「こんにちは、悟天君」
そう言って頭を撫でてやると、思いっきり嬉しそうな顔をする。その顔を見ると、胸の奥がほんわかとする。
「おねえちゃん早く入って!!」
悟天はビーデルの手を取り、リビングへと誘う。
そこにはこの家の主、孫悟空がソファで寛いでいた。
「おじさんこんにちは」
「よう!!」
悟空は顔だけこちらに向けて手を振って言った。
「いらっしゃい、ビーデルさ」
「こんにちは、おばさん」
キッチンから出てきた悟空の妻、チチに挨拶をする。
「すまねえだ、ビーデルさ。今、悟飯に買い物に行って貰ってるんだべ。戻ってくるまでここで待っててくれるだか?」
「はい」
勝手知ったる他人の家。
お茶の用意をするチチについて台所へ行く。
ビーデルは週末になると孫家に訪れていた。悟飯に勉強を教えて貰う為なのだが、孫家の人々にとってはもう公認の仲。
実際、付き合い始めてまだ数ヶ月といったところの初々しい恋人なのだが、孫家での存在はもう嫁のようで。
「ビーデルさ、これ持って行ってけろ」
「はい」
ビーデルはチチから大量のクッキーを受け取り、リビングへと向かう。
「やった!! クッキーだっ!!」
悟天はビーデルのまわりを飛び回る。
「悟天君、手を洗ってからじゃないとあげないってお母さん言ってたわよ」
「は〜い」
悟天は手を洗いに洗面所へ。
リビングへ行くと、
「お!! チチのクッキーか!!」
悟空がクッキーへ手を伸ばす。
「ダメです!! 手を洗ってから!! おばさんに言いますよ」
「へ〜い。」
渋々悟天の後を追って洗面所へと消えて行った。
「ビーデルさも座ってけろ」
「はい」
チチはお茶を持ってリビングへ来た。
それと同時に悟空が悟天を肩に乗せて現れた。
「やっと食えっぞ悟天!!」
「やったね!!」
悟空はソファに座り、悟天はその横に飛び降りる。
普通の何倍もあるクッキーは一瞬にして消える。
それを平然として受け流しているチチはすごいといつも思う。
ビーデルとチチの為にとってあるクッキーに手を出す悟空に目を見張る速さの手刀で払い落とすチチに、ビーデルは思わずびっくりする。
その時、電話が鳴った。
「はいはい」
チチは立ち上がり電話を取る。
「はい、孫です……あ、ブルマさ?」
ブルマからの電話だ。
どうせ、べジータの事で愚痴でもあるのだろう。こうなれば電話はなかなか終わらない。
ビーデルは孫家に通ううちにそういう事も知った。
「そういやさ」
悟空が唐突に口を開いた。
「オメエら、いつケッコンすんだ?」
「ごほっ!!」
ビーデルは驚いてクッキーを喉に詰まらせる。
おねえちゃん大丈夫?と言いながらお茶を差し出してくる悟天からカップを受け取る。
「お、おじさんっ!?」
お茶を飲み干して思わず叫んだ。
「何言ってるんですか!? 私達まだ17歳ですからっ!!」
「オラ達18でケッコンしたぞ?」
「……それは知ってますけど……」
ビーデルは悟飯から両親は18歳で結婚したとは聞いてはいた。
悟天からは天下一武道会で結婚したと聞いたが、どういう意味なんだろう?
悟飯にはタイミングを逃して聞けていない。
今はいい機会だ。
ビーデルは悟空に聞いてみようと思った。
.