novel
□孫家のある週末
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「おじさん。おばさんと天下一武道会で結婚したって聞いたんですけど……」
「ああ、そうだぞ。チチと対戦した時にケッコンしたな」
「対戦っ!?」
悟天からここまでは聞いてはいなかった。ただ天下一武道会で結婚したって言うから、武道会場で恋人だったチチと結婚しただけと思っていた。
それが対戦した時だったとは!?
「おう。チチと対戦してる時に昔ヨメに貰うって約束したって言うからよ。だから約束守んなきゃって」
「ええ〜……」
その理由は何だ?そんな理由で結婚したのか?
「最初はヨメの意味がわかんなくってさ。ま、いっかってカンジでケッコンしちまった」
笑いながら言う悟空。
開いた口が塞がらない。
「でもよ、チチとケッコンしてよかったぞ。ケッコンていいもんだ」
満面の笑みで言う。
悟空は嘘を吐ける人ではない。これは悟空の本心だ。
安心したところで、はたと気付く。
天下一武道会で対戦……? って事は……
「おばさんも天下一武道会の本戦に残ったんですか……?」
「おお。本戦で当たったんだ」
本戦!?昔の天下一武道会は現在のように予選はパンチングマシンではなくて対戦形式だったはずだ。それもかなりの猛者が予選で振り落とされる。
「……おばさん……本戦に残ったって……それってすっごく強いって事じゃ……」
「アイツ、地球人の中じゃかなり強い方じゃねえか? まぁクリリンとかって程じゃねえけど」
「……」
「それにあん時って結構すごいメンバーだったな。クリリンとか天津飯とかピッコロとか」
その中のベスト8って……。
「アイツも亀仙流になるんかな? 牛魔王のおっちゃんが亀仙流でさ、おっちゃんに習ったんじゃねえかな?」
「……そうなんですか?」
「それに悟天に武術教えたんもチチだし」
「そうなの!?」
ビーデルはジュースをゴクゴク飲んでいる悟天に向き直る。
「うん。おかあさん、とっても強いんだよ」
ゴックンとジュースを飲み込んで、悟天は答えた。
「悟飯のヤツ、キレたらとんでもねえ力出すだろ?ありゃチチの血だな」
確かに悟飯の底力は凄い。それをあの華奢な母親の血だというのか? この人は……。
すると……顔の横を何かが掠めた気がした。
目の前の悟空にスリッパが命中している。
「いって〜……」
「余計な事言うでねえぞっ悟空さっ!!」
受話器を押さえながらチチは叫んだ。
あの距離でしっかり命中させてくるあたり、さすがというべきか……。
「な? すげえだろ?」
目を丸くしているビーデルに悟空は小声で言う。
「……は……はい……」
それにしても電話で話しながらもちゃんとこっちの会話も聞こえているのか?
悟空達と違ってチチは普通の地球人のはずなのに……この孫家の人々というのは全員が常人ではないのか……?
確かに普段からのチチの身のこなしにはそつが無いというか、動きに無駄がないように思う。
武術に精通しているビーデルだからわかるのだが、ここまで常人レベルを脱しているとは思わなかった。
「悟飯は見た目はオラ似だけどよ、中身は結構チチに似てんだぜ」
悟空は小声で言った。その様子は何だか嬉しそうで……。
「ねえねえおとうさん、僕はおとうさん似?」
悟天は悟空の腕を掴んだ。
「ん? そうだなぁ……見た目は完全にオラだな。初めて見た時びっくりしたぞ。ちっせえ時のオラがいてんだもんな。でも中身はチチだな。甘えん坊なところとか。」
「ぼく甘えん坊じゃないよっ!!」
ぷうっと頬を膨らませる仕種なんか、新婚の頃のチチを連想させる。
「ハハハッそっか?」
悟空は悟天の頭をクシャクシャッと撫でた。
「甘えん坊なところは悟空さだべ」
電話が終わったチチがビーデルの隣に腰掛けながら言った。
「そうだよね。おとうさん甘えん坊だもんね」
悟天は笑いながら言った。
「悟天よりはマシだと思うぞ?」
「絶対おとうさんの方が甘えん坊だもん!! 僕一人で寝れるけど、おとうさん、おかあさんと一緒じゃないと眠れないじゃない!!」
「ブーッ!!」
チチは思わず口に含んだお茶を噴出し、ビーデルは真っ赤になって口をパクパクさせていた。
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