novel

□家と涙
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「今日はじっちゃんの所へ行ってくる。」

 悟空はどんぶりのご飯をかき込みながら言った。

「じっちゃんて、武天老師様だべか?」
「いんや、オラのじっちゃん」
「悟飯様だべか」

 チチはお茶を淹れながら言った。

「おう。こっちに帰って来て、まだ行ってないかんな。悟天も行くか?」
「うん!!」

 悟空のミニチュアのような悟天は口もまわりに米粒をたくさん付けて、嬉しそうに返事した。

 7年振りに帰って来た父親の傍を片時も離れたくない悟天は、いつ、何時も悟空についてまわった。
 
 生まれて初めて味わう父親の温もりをずっと感じていたいという健気な息子の気持ちを慮って、悟空もチチも悟天の気の済むようにさせていた。

「今日は雨だべ。大丈夫だか?」
「こんくらいの雨何て事ねえよ。なあ、悟天?」
「うんっ!! へっちゃらだよ!!」
「そうだか? 悟空さ、悟天に風邪ひかさねえようにしてけろな」
「おう」

 悟空は悟天を肩車し、玄関の扉を開ける。

「悟天、オメエが傘させ」
「うん」
「濡れねえようにな」
「わかってるって!!じゃあ行ってくる」


 悟空と悟天は山の方へ歩いて行った。


「お父さん、舞空術で行かないの?」
「ああ……じっちゃんの所へ行く時は歩くって決めてんだ」

 悟空は悟天を肩車したまま、山道を歩く。

「お父さん、ぼくも歩く」
「ん? いいけど、どうしたんだ?」

 悟空は悟天を下ろしながら問うた。

「ぼくもおじいちゃんの所へ行く時は自分で歩くよ。その方がいいって気がしたんだ」
「そっか」

 悟空は悟天から傘を受け取り、二人で歩いた。

「おじいちゃんのお家ってお父さんも住んでたんだよね?」
「そうだぞ。父さんの最初の家だ。今の家はオメエ達と住んでるあの家だけど、じっちゃんの家もオラの家だかんな」
「お父さん、お家二つあるんだね!!」
「そうなるんかな?でも今帰る家はオメエ達と住んでる家だけだ」


 そう言うと、悟天は嬉しそうに笑った。 


 結婚当初は祖父の庵に住むのもいいと思った。

 でもただでさえ不便なパオズ山に住むのだ。少しでも開けてる場所で、チチの負担が減らせる場所に新居を置く方がいいと、義父の牛魔王に言われて今の場所に家を建てた。

 もっとも、建ててくれたのは牛魔王なのだが。

「悟天、オメエ、トランクスん家みたいなデッケエ家で、もっと町の方に住む方がよかったか?」
「……そうだね……でも、今の家が一番好きだよ。パオズ山だって大好き!! 遊ぶ所いっぱいだし。それにお家はトランクス君家みたくおっきくなくていいんだ。今のお家はお父さんもお母さんも兄ちゃんもすぐ近くにいるから安心するんだもん!!」
「……そっか……」

 自分も昔はそうだった。祖父が傍にいる。大猿が出ると言われた満月の晩も、祖父がすぐ傍にいてくれたから全然怖くなかった。
 そして結婚してからは、チチと二人、すぐ傍で寄り添って、お互いの息遣いを感じながら暮らしている事にすごく安心した。

 7年も離れていたのに、思う事は同じ。悟空はすぐ隣を歩く自分の分身のような息子に、見た目以上の親子の絆を感じた。

「悟天、ほら」
 手を差し出すと、嬉しそうに握ってきた。

 どこから見ても親子とわかるほどにそっくりな親子は、雨の中手を繋いで歩いて行く。


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