novel

□Thing wishes to your eyes
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 チチの言葉にべジータも思う。

 カカロットがいたからここへ来た。カカロットがいたからブルマに出会えた。カカロットがいたから……。

 何て皮肉な運命なんだ。べジータはそう思いながらも、この出会いも、今の生活も、全然悪くないと思う。

 急に黙り込んで二人を見つめるべジータにチチは優しく微笑んだ。

(こんな事言えやしないけど、べジータさも悟空さの事好きだべな。だから……おら達仲間なんだべ)

「何だ?」

 その視線に気が付いたのか、べジータは怪訝そうに言った。

「それにおらは悟空さを信じてるだ。おら、悟空さの事愛してるし。それに悟空さもおらの事愛してくれてるって信じてるだ。べジータさもブルマさの事、愛してるべ?」
「き、貴様っ何て……!!」

 愛してるなどと明け透けに言うチチにべジータは赤面した。

 しかし、べジータそのまま黙った。


 自分はブルマの事を信じていなかったのか?
 
 いや、そうではない。ではこの感情は何なのか?

「わかってても、やっぱり嫉妬してしまうだな……」


 嫉妬……。


「あの二人は愛とは違うところで繋がってるんだべな」

 
 チチはずっと嫉妬していた。
 
 新婚の頃は悟空は自分なんかよりもブルマの方が好きなのだと家出をした事もあった。
 何かにつけてブルマとの仲を疑った事もある。

 でも、自分はブルマには無いものを持っていると思った。悟空の子を産んだという自信が。

 しかし年が経つにつれ、そういう嫉妬めいた気持ちも薄らいだ。

 ブルマにはべジータという愛する人が出来、子を産んだ事。
 それに悟空とブルマの仲は愛ではない友情、姉と弟のような関係で、それは自分には引き離せるものではないと悟ったのだ。

 それが決して愛になる事は無いと、そういう自信もついた。

 チチはべジータと同じように黙った。

 べジータはチチの言う事を反芻していた。

 ……嫉妬か……。

 ブルマが自分以外を愛するなんて有り得ないと信じてる。例え自分が隣にいなくとも。

 それでも、ブルマが他の男に笑いかけてるのは許せない。それがカカロットだからではない。他の男全員だ。

 カカロットにはこの女がいるからいいとして、問題はヤムチャだ。

 ブルマの昔の恋人だというあの男の方が危険だ。

 ビーデルと話しているヤムチャに殺気を送る。

 ヤムチャは得体の知れない殺気に身震いがした。

「どうしたんですか?ヤムチャさん」

 ビーデルはヤムチャに聞いた。

「ううん。何でもないよ」

(……べジータ……まだブルマとの仲を疑っているのか…? ってあれ?もう一つ変な気が……)

 ヤムチャはその気の方を向くと、悟飯がデンデと話していた。
 しかし、その穏やかの表情とは裏腹に、殺気とも思える気を発していた。

(……悟飯……お前もかよ……)

 ヤムチャは少し泣きたい気分になった。

 でもあんなに子供だった悟飯が嫉妬とはな…と、少し嬉しい気持ちもあったりするのだが、だからと言って、あのサイヤ人供に殺気を向けらてはたまったもんじゃない。
 ここに悟空が含まれてないだけマシか……などと、心の中で嘆息した。

 チチはべジータの殺気の標的がヤムチャに移行した事に気付いて、

「そうだ!! 今度悟天にケーキ持たせるだ。べジータさ、食ってけろな。」
「ケーキ?」
 べジータの米神がピクッと動く。

 サイヤ人の興味の逸らし方を熟知しているあたり、さすがサイヤ人の妻といったところか。べジータの興味が一気にそちらへ向く。

 チチのケーキ。それは非常に美味なるものだった。

 チチは悟飯や悟天がカプセルコーポレーションに遊びに行く時によくお菓子など料理を持たせるのだが、べジータはチチの手料理を好んで食べた。

 こんな美味いものを毎日食べているのか? と、それだけでも悟空を疎ましく思ったり……。

 決してカプセルコーポレーションでの料理は不味いわけではない。どちらかと言えば美味いのだが、チチの料理はかなりのレベルで上手いものだった。

 自然と顔がほころぶ。さすがに食べる事が大好きなサイヤ人だ。

 チチはべジータの興味がケーキに移った事に安心して一息吐いた。


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