novel

□promise
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 パオズ山に戻ってから、悟空は動ける限り馴染みの場所を巡った。その傍らには必ずチチか息子の悟飯がいた。

 祖父の庵や好んで修行した谷、悟飯と釣りをして遊んだ川……。

 いろんな場所を巡った。思い出を、その身体いっぱいに、その胸に刻み込むように。


 そしてこの日も、思い出を巡る為にチチと共に出掛けた。

 そこは自宅から少し行った所にある奥深い森。

「懐かしいなぁ……オメエが出てった時、ここでオメエを見つけたんだ」
「そんな事覚えてるだか?」

 チチは少し恥ずかしそうに頬を染めた。

「当たりめえじゃねえか。忘れるわけねえぞ」

 悟空は微笑みながら言った。

「オラ、オメエがいなくなって、オメエの気も探れねえくれえ焦ったのなんか初めてだったんだ」
「……」
「でもよ、筋斗雲にここに連れて来て貰って、オメエを見つけたんだ。そしたらオメエ、道着に着替えててよ」
「み、見てただかっ!?」

 見られていたのは初耳だった。何年も共に生きてきて、その事実を知ったのは今日が初めてだった。

「何で言わなかっただかっ!?」

 真っ赤になって怒るチチ。悟空はそんなチチですら愛しく思う。

「だってよ、言ったらオメエ怒るじゃねえか?」

 豪快に笑いながら悟空は言った。

「……だども……」

 羞恥の為に真っ赤になっているチチ。何を今更、と悟空は思うのだが、こういう何年時を経ても変わらないチチが限りなく好きだった。

「……あん時のオラはバカだったって思ってるぞ。何で何もわかんなかったんだって。ずっとオメエの事が好きだったのに、その事も気付かねえでよ……オメエを傷付けちまって、出て行かれるまでオメエが何よりも大事だって気付かなかった」

「悟空さ……」

「……オラ、オメエを壊しちまうんじゃねえかって、ずっと怖かったんだ。オメエに触る事でオメエが壊れたらどうしようって。でもオメエを見てたら無性に触りたくなったんだ。あんなに触るのが怖かったのに……」

 初めて聞くあの頃の悟空の心境。チチの双眸には涙が溢れてきた。

 今まで一度もそんな事口にした事なかったのに。口下手な夫から、愛の言葉一つ聞いた事がなかったのに。


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