novel
□promise
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「オメエとケッコンの約束しちまって、なんて面倒な事になっちまったんだって最初は思ったけどさ、だんだんオメエと二人で暮らしてるのも悪くねえなって思ってさ。そのうちオメエがいる事の方が当たり前になって、それでオメエがいなくなる事が怖くなったんだ」
悟空は傍らのチチを抱き寄せた。
「……オメエはずっとオラを待っててくれて、オラに家族も作ってくれた」
チチは細くなってしまった悟空の腕に頬を寄せた。
「……オメエでよかった……オラにはオメエじゃねえとダメだったんだ……」
涙が止めどなく溢れる。
この人の妻になれた事が自分の誇りだった。
そんなこの人にお前じゃないと駄目だったと言って貰えるこの幸せ。
「……おらも……悟空さの妻になれてよかっただよ……選んで貰えて……嬉しかった……」
チチは悟空の腕に縋りつくようにして泣いた。
「……オラが選んだんじゃねえよ。オメエがオラを選んでくれたんだろ? チチ」
悟空は限りなく優しい目でチチを見る。
根無し草のような自分を、強くなる事にしか興味がなかった自分を、闘いとなると他の事が見えなくなる自分を、生涯の伴侶として選んでくれたのはまぎれもなくチチ。
チチがいなければ、今の自分はいない。
家族という、甘美で温かな、何事にも変えがたいものを自分に与えてくれたチチ。
チチが来てくれた事で、自分は普通の人間だったのだと実感できた。
例え自分が異星人であったとしても、そんな事関係ないと言ってくれたチチ。
「……悟空さ……おら達は選んだんでも選ばれたんでもねえ。お互いに、お互いが必要だったんだべ……おら達は結ばれるべくして結ばれたんだ……」
涙に潤んだ、大きな黒い瞳で見上げて言うチチ。その瞳は強い意志が備わっていた。
「……そうだな……そうに違いねえや」
悟空は満面の笑みで答えた。
二人は抱き合ってその場に佇んでいた。
擦れ違って傷つけ合って、でも許し合って温めあった。そうして夫婦になった。
二人で過ごしたどんな日々も忘れないだろう。
これから先、悲しい現実が待っていたとしても、自分達の未来は明るいと信じて……。
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