novel
□Reunion
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そこには、その気の正体が小さな子供と手合わせをしている姿があった。
そしてそれは、ここにいるはずが無いと思われていた人物。
「ご、悟空さんっ!!」
名を呼ばれ、その気の正体・悟空が振り向いた。
「トランクス? トランクスじゃねえか?」
「悟空さん……どうして……?」
トランクスの目は少し潤んでいた。
「オラ生き返ったんだ」
そういうとニカッと笑った。
悟空は生き返る経緯をトランクスに説明した。
「老界王神様の命ですか……さすが悟空さんだ…」
トランクスは驚愕の色を隠せない。でも悟空になら有り得ると納得できた。
「オメエも元気そうだな。あっちのブルマも元気か?」
「ええ元気です。あちらも随分落ち着きました。でも……こちらでもそんな大変な事が起こっていたなんて……でもそれで生き返ったんですね……」
悟空の死を目の当たりにした。悟空の気がセルの気と共に消えるのを感じた。
でもこうして、悟空はここに生きている。
「……なあ、トランクス。あっちの……チチも元気か?」
「ええ、多分……亡くなったという知らせは受けてないんで……すみません……はっきりした事がわからなくて……」
トランクスは申し訳なさそうに言った。
「いや……いいんだ……」
もう一つの未来。自分が心臓病で死んでしまった未来。
そちらでのチチの事も気がかりだった。
自分はもういない。悟飯も……。それに悟天も生まれていない世界。
誰がチチを守ってくれるのかと。
自分があちらのチチを守れない分、自分はこちらのチチを大事にしないといけないのだ。
「ねえ、おとうさん。この人誰?」
悟空の足元からひょっこりと顔を出す、悟空にそっくりな少年。
「悟空さん……その子……?」
「弟です。弟の悟天です。」
背後から悟飯が答えた。
「よう、悟天」
「トランクスくんっ来てたの!?」
悟飯の傍にいた小さいトランクスが悟天に声をかけると、恥ずかしそうに父親の足元に隠れていた悟天が飛び出してきた。
「……弟……?」
「そっか!! あっちじゃ悟天は生まれてねえんだったな」
「そうだったんですよね。トランクスさんの世界じゃ、悟天はいないんだっけ……」
悟空と悟飯は顔を見合わせた。
「オラが死んじまってから生まれたんだけどよ」
「そうだったんですか……」
「トランクスくん。この人もトランクスっていうの?」
「ていうかオレだぜ。かっこいいだろ?」
小さいトランクスは自慢げに言った。
「へえ!! よくわかんないけどトランクスくんなんだ!! じゃあトランクスくん、大人になったら、こんな風になるんだ!!」
「そうだぜ!! でも悟天だって大人になったらどんなになるかわかるじゃん」
「え? なんで?」
悟天はキョトンとした。
「悟空おじさん、おまえにそっくりじゃん? だからおまえは悟空おじさんみたいになるんだよ」
「あ、そっか!!」
事も無げに言うトランクス。その言う事を鵜呑みにする、純粋少年の悟天。
「こっちのトランクスと悟天は親友なんです。もし……トランクスさんの世界で生まれてたら、きっと親友だったでしょうね……」
幼い頃、何度か夢で見た。
自分の師匠の面影を持つ、自分と同年代の少年と遊ぶ夢を。
「……この子だったんだ……」
「え?」
「いいえ…なんでもないです…。」
(そういえば悟空さんにそっくりだったな……)
何だか不思議だった。
あちらでは存在しない少年はこうしてここに存在している。
それに夢で見た少年と同じ少年で、こちらの自分とは親友だった。
その夢の少年は自分の師匠である悟飯への尊敬の念から作り出したものだと思っていたのに……。
なんと不思議な縁なのか。
本当は存在しない少年。
自分が未来を変えた事によって生まれた、こちらの自分の親友。
本当に不思議だ……。
トランクスは無邪気に遊ぶ、二人の少年と、夢の中の自分達を重ねて微笑んだ。
end