novel
□Person of the only
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「ホントにすまねえっ!!」
夫婦だけの寝室のベッドの上で、悟空は背を向けて横になっているチチに土下座をした。
ヤードラットとかいう星で修行をしていたという悟空は瞬間移動なる技を身に付けたと息子・悟飯が嬉々として語っていた。
しかし、チチにはそんな事はどうでもよかった。
悟空は三年後に訪れるという人造人間の襲来の為に悟飯の力が必要になるから悟飯と、そしてかつての大魔王・ピッコロと一緒に修行をしたいと言い出し、挙句の果てにはちょっとはたいただけなのにチチを吹っ飛ばしてしまった。
大怪我を負ったチチだったが、仙豆を勧められても自分も武道家のはしくれだと、頑なに拒否した。
身体が痛い。頭も若干打ったようだ。
本当は素直に仙豆を食べればよかった。
だけど、仙豆を口にする事は何だ癪に思えた。
悟空はいまだに土下座をしている。
そうは簡単に許すわけにはいかない。
悟飯に修行させる事は許した。だけど、まだ自分の中ではくすぶっているものがある。
帰る事を拒絶されたのだ。そしてその時、夫の師匠に言われた一言が胸に突き刺さった。
―自分の事が嫌いだから、帰りたくないのか?
元々、自分が強引に押しかけて結婚したようなものだ。
悟空は優しいから受け入れてくれただけで、本当は自分の事など好きでも何でもないのかも知れない。
チチはここ数年で、そう思うようになっていた。
それにもう一つ、悟空を素直に受け入れられない理由があった。
確かに悟空なのに、何か違和感を感じる。
悟空の中に何かいるような、何だか不思議な感じがしていて……。
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