novel

□the first getting warm
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幸せはこの腕の中にある。

何も知らずに今まで生きてきたけれど、

それを知ってしまった今、

この温もりなしでは生きられない―。


 明け方、ふと目が覚めた。

 身体が妙に気だるい。

 それでも決して嫌な感じでは無いのは何故だろう。

 身体は気だるいのに心は妙に満たされて、減っていた腹が満腹になった、そういう感じだった。


 ボーっとした頭で考える。


 ああ、そうか。


 隣を見ると、いつもはきれいに梳かれている黒髪を少し乱して、グッタリと横たわっているチチが目に入った。


 夕べ、初めてチチを抱いた。

 
 ケッコンして2ヶ月。

 チチが怖かった。

 チチによって自分が変わってしまいそうで、自分を全てを持っていかれそうで……。

 だからチチが怖かった。


 でもチチがいなくなる事の方が怖い自分に気付いて、その時、チチがどんなに大切な存在か気付いた。

 チチが出て行こうとして初めて自分の気持ちに気付いた。いや、それよりもっと前から気付いていたのに気付かない振りをしていたのかも知れない。

 
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