novel

□the first getting warm
2ページ/4ページ


 自分の正直な気持ちを吐露し、チチに触っていいと言われた。

 その途端、チチが無性に欲しくなった。

 チチの全てを自分のものにしたくなった。

 坂を転がり落ちるように、その思いがあの行動に走らせた。

 
 強く強く抱き締めた。

 泣かせたくないのに啼かせたい。

 自分でも正体不明なこの感情に少し戸惑いこそしたものの、チチを好きだから、自分のものにしたいからだと気付いた途端、抑えていたものが抑えきれなくなった。


 どうすればいいのかなんてわからなかった。

 でも男としての本能か、こうしたいと思う事は間違ってはいなかった。


 チチを自分のものにする。


 ケッコンしたからチチは自分のものなのに、本当は全然手に入れてはいなかったのだ。

 それが昨夜、本当にチチの全部を手に入れた。


 チチは自分を狂わせる。

 チチが発する声のひとつひとつが、チチの大きく黒い瞳が、その滑らかで白い肌が、自分の中のもう一人の自分を呼び覚ますような、そんな錯覚すら覚えた。

 血が沸騰し、逆流するような感覚。

 こんな自分は知らない。

 でもこれがきっと本当の自分なのだろう。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ