novel
□Pain
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あの女の涙を見た瞬間、
心臓が跳ねた。
そして感じた、
胸の痛み―。
重力室から出て、窓の外を見ると雨だった。
ここに入ったのはいつだったか。ベジータは過度のトレーニングで疲労した身体を引き摺り、ぼんやりと考える。
今朝だったのか。それとも昨日の朝だったのか。
朝目覚めて重力室へ入る時は確かに晴れていたのだが……。
ベジータはここへ入ると時間を忘れてトレーニングに没頭してしまう性質だった。それこそ何日も篭ってしまう事もある。そしてトレーニング用の戦闘服をボロボロにする事も少なくない。
それはベジータの唯一無二のライバル・カカロット、もとい孫悟空にも言える事で、これも悲しきサイヤ人の血なのかも知れない。
これも全てライバルに負けたくないという思いからであった。
どうしてもカカロットに負けるわけにはいかない。その思いがベジータを駆り立てていた。
ここの重力室はトレーニングにもってこいだった。
それでもここから随分と離れた荒野や山岳地帯でトレーニングする事もあるのだが、やはりここでのトレーニングが一番だった。
地球(ここ)へ来てどれほどの時が経ったのだろう。
随分になるような気もするし、ついこの間のような気もする。
正直なところ、ベジータにとってここは居心地が良かった。
ここの主とその婦人は随分と気のいい人物だった。
元々はこの星を侵略しようとしていたベジータを快く迎え入れ、それどころか主は自室と重力室まで与えた。
婦人の方もベジータを随分と気に入り、暴食の限りを尽くすベジータであってもニコニコと嬉しそうに食事の世話をするのだ。
ここの星の連中全てがお人好しなのかと思えばそうではないらしい。この夫婦が特別で、運が良かっただけなのだとベジータが知ったのは、この星へ来てそんなに経ってはいない頃だった。
無論王子気質のベジータは感謝する事もなく、ごくあたりまえの事だと捉えている。
そしてこの家にはここの娘とその恋人も住んでいる。
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