novel
□Distance-距離-
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何て皮肉な話なんだろう。
ヤムチャを助ける為に行ったナメック星で出会ったベジータに、侵略者だった、敵だった、ヤムチャの敵とも言えるベジータに、私は恋をしてしまった。
それは、ここに戻ってきてから、ヤムチャが生き返ってからの話で、ナメック星での話ではないけれど、それでも幾分かの罪悪感はある。
結果的に私がベジータを好きになってしまったのだから。
それでも、彼に会って、もう一度確かめたかった。
自分の気持ちに偽りも翳りもないのかを。
でも彼は帰って来ない。私に会ってくれない。
持て余し気味の気持ちのまま、重力室へと赴く。
毎日毎日、重力室へ通った。ベジータが帰ってきているかも知れないと。
でも、あんなに好きだった重力室にも戻って来ないのだ。
(……何で……?)
何で戻ってきてくれないの?会いに来てくれないの?
涙が溢れた。
思わず重力室を飛び出し、ベジータの部屋へ行った。
扉を開ける。
殺風景な部屋。
自分がこの部屋を宛がった時から何一つ変わっていないように思えた。
それは、いつでも出て行けるような、そんな意思すらも感じて…。
「……ベジータ……」
もちろん彼はいない。でも。彼の名を呼ばずにはいられなかった。
ベッドの脇に座り、シーツに触れる。
感じるわけがないのに、彼の温もりを感じるようで……。
頬を寄せる。
やっぱり、彼の温もりを感じるようだった。
ふと、入り口に気配を感じた。
心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うくらい、何かを予感して高鳴る。
振り返るとそこには……
「……ヤムチャ……?」
別れたはずの恋人がいた。
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