novel

□Desire-渇望-
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 重力室はブリーフ博士に頼めばいい。

 ブルマにわからぬように、どこか離れた場所に作ってくれと頼めば、あの博士なら作ってくれるだろう。

 ベジータはその事を告げる事と荷物をまとめる為、カプセルコーポレーションに帰ってきた。

 先程までの青空は、もう朱に染まっている。

 まずは荷物をまとめるのに自室に戻ろうと思った。

 自室までの廊下を重い足取りで歩く。

 いつもならば、ブルマに会わないように急いで自室に飛び込んだ。

 しかし今は、自室に戻る事を拒んでいる。

 ふと歩みを止る。

 そこへ入り、そして出ると、もうこの家とは関係が無くなる。それはブルマとも…。

 ベジータは頭を振り、いつものように背筋を伸ばした。

 己で決めた事だ。何も迷う必要などない。
 心をここへ止め置く事はしてはなるまい。

 ベジータは意を決して歩き出す。

 自室までもうすぐというところで、部屋の前で男女が抱き合っているのが見えた。

「!?」

 ヤムチャと……ブルマッ!?

 何故自分の部屋の前で抱き合っているのか?あの二人は別れたのではないのか?

 心が掻き乱された。無性にこの場から立ち去りたかった。

 しかし王子としてのプライドか、逃げるような真似など出来なかった。

 傍まで来た時、ブルマの揺れる蒼い瞳が目に入った。

 ベジータは咄嗟に目を逸らし、低く言った。

「いちゃつくのは構わんが、他の場所でしてくれ」

 幾分声が掠れていた。

 ベジータは振り返りもせず、部屋へ入り、扉を閉めた。

 あの二人は別れたのではなかったのか?
 あの時ブルマは確かにそう言った。…しかし、泣いていた。

 あの時のブルマの様子から、ブルマはまだヤムチャが好きなのだと思った。

(ヨリを戻したのか……)

 ベジータは俯いたまま、扉を背にして立っていた。

 そして顔を上げ、トレーニングウェアなどの私物をカバンに詰める。

 もう、何の迷いのない。

 その時、部屋をノックする音が聞こえた。

「ベジータ?」

 ブルマの声だった。

 途端心臓が跳ねる。

 しかし、すぐに現実に戻る。自分に何の用だと言うのか?

 無視を決め込んだ。

 しかしブルマは懲りずに何度もノックをしてきた。

「……何だ……?」

 根負けしたつもりは無いが、つい返事をしてしまった。

「入るわよ」
 こちらの返事も待たずにブルマは入ってきた。

 ベジータは無言で荷物をまとめる作業を続ける。

「……な……に……してるの……?」
 ブルマの声は幾分か掠れていた。

「……ここを出て行く」
「何でっ!?」

 ブルマの驚愕したような声にベジータも方が驚く。

(何故俺が出て行く事に驚くのだ?俺など厄介者だと思っているのだろうに)

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