novel
□Desire-渇望-
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ベジータは平静を装い低く告げる。
「……いい……トレーニング場所を見つけた。ここより随分遠い所だ。戻ってくるのも面倒なんでな」
あらかじめ用意していた言い訳を口にする。
ここよりいいトレーニング場所などない。
言い訳などする必要もなかった。
でも、ベジータはらしくもない嘘で言い訳をした。
「ダメよっ!!」
突如そう叫ぶブルマの顔を驚きの表情で見る。
(何故駄目なのだ?あの男さえいればいいだろう)
ベジータはそう思うと、ブルマの言動に不信に思い、眉根を寄せた。
「貴様に指図される筋合いはない」
どれほど低く、冷たい声で言ったのだろうか。ブルマの蒼い瞳から、涙が溢れ出てきた。
(な、何!?)
ベジータは少し動揺したが、そのまま立ち上がり、
「世話になった。もう会う事もあるまい。…あの男と仲良くするんだな」
そう言ってブルマの横をすり抜けようとした。その時、
「嫌よっ!!」
突然、背中に温もりを感じた。
「な、何をっ!?」
ブルマは背後からベジータに抱き付いていた。
「……嫌よ……アンタがここを出て行くなんて……絶対にイヤ……そんなの……許さない……」
背中に涙が沁み込んでくるのがわかる。
「……好き……なの……ベジータ……アンタが……」
突如告げられたその言葉に身体が硬直する。
ベジータの身体は今までにないくらい硬直した。緊張した。
硬直とともに、何かが身体の奥から湧き上がってくるような、衝動的に発してしまいそうな熱が、ベジータを支配しようとしていた。
「……き……貴様……何言ってやがる……」
(あの男がいるくせにっ!!)
今まであの男に抱き締められていたくせに、その口で、その声で、この女は何を言っているのか?
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