novel

□この世の果て
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失わせてばかりだった。

でも今度は

自分が失う番―。



 そこに力なく横たわるは、かつて自分と共に金色の雲に乗り、共に生きると宣言した連れ合い。

 その彼女の自慢の黒髪は白くなり、白くて滑らかだったその肌には皺が増えた。

 その、苦労を重ねた小さな手を握り締め、彼女がこうなったと長男から連絡を受け戻ってから、片時も彼女から離れずにいた。

「……泣くでねえよ……」

 そんな彼女の声は、かつて自分を震わす程の威力を持った、力強い声を発していた同じ人物だとは思えない程弱々しい。

「ずっと一緒だって言ったじゃねえか……」

 今にも泣き出してしまうかと思った。声を発すると、涙が溢れて止まらなくなるかと思った。

 でもそんな事、この女は望まない。

 だから、そうならないように、必死で、必死で耐えた。

 でも、彼女には全てお見通しで…。

「……すまねえだ…約束守れなくて……」


 認めたくないけれど、じんわり、じんわりと、自分ですら抗う事の出来ない、『死』という強敵が彼女を連れ去ろうとしていた。


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