novel
□愛しいあなたへ―Jealousy is a little spice. ―
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vol.2へ
「チチ。今日もブルマん家行くんか?」
悟空はどんぶりのご飯をかき込みながら、チチに向かって言った。
「ん? 今日はいいだよ」
チチはお茶を飲みながら言った。
「いいんか?」
「いいだよ。何でだべ?」
チチはキョトンとして訊ねる。
「……いや……別に……」
何だか腑に落ちない悟空だった。
「さすがチチさんね。男達が気付いてるってわかるなんて」
ブルマは感心しきっている。
「悟空さが単純すぎるんだべ。何か怪しんでるってのが顔に出てるだよ。昨日重力室から出てきた時点でわかったべ。ベジータさを巻き込んだ事もな。それに夕べ悟飯とコソコソ話してる事も気付いてたしな」
チチはケラケラ笑いながら言った。
「だから裏をかいてここに集まるとはよく考えたもんだな」
「んだ。どうせ悟空さと悟飯はベジータさの所に行って作戦を練り直すと思ったからな。ならここが一番安全だべ。18号さ、クリリンさは気付いてねえんだべか?」
「毎日のように出てるから、ちょっとおかしいとは思ってるみたいだよ」
クールな18号はその口角を少し上げた。
「今頃みんなでカメハウスに行ってるんでねえか?」
「クリリンも巻き込んだのか?」
「在り得るわね」
チチ、ブルマ、18号の三人は顔を見合わせた。
「……あの……おばさん……悟飯君も気付いてるんでしょ?悟飯君頭いいから、裏をかかれたってすぐわかるんじゃ……」
ビーデルは心配顔で言った。
「いいや。悟飯は結構こういう事には疎いんだべ。逆に悟空さの方が鋭いんだべ」
「そうなんですか!?」
「そうよね。悟飯君天然だもんね。ビーデルちゃんもいろいろと苦労してるでしょ?」
ブルマは含み笑いでビーデルの顔を覗き込む。
「いえ……その……」
真っ赤な顔で俯くビーデル。
「ブルマさ。将来のうちの嫁をあんまりからかわないでけろ」
「おばさんっ!!」
ますます真っ赤になるビーデル。
「もう嫁なのかい?」
普段クールな18号も、気のおける友人の前ならケラケラと笑いながらからかいもする。
「ちっ、違いますっ!!」
真っ赤になって叫ぶビーデルの声は、ここ、パオズ山に響き渡っていた。
「クリリン、18号いるか?」
悟飯とべジータを伴って瞬間移動で現れた悟空に、愛娘と遊んでいたクリリンの少し驚いたが、毎度の事なのですぐに平常心に戻った。
ただ、悟空と一緒にベジータまで来るとは…これはただ事ではない。しかも妻に用事とは…。
「いや、いないけど、お前達が18号に用なんて珍しいな」
「18号に用ってワケじゃねえんだけど……」
キョロキョロしながら言う悟空をクリリンは怪訝そうに見る。
「じゃあなんだ?」
「18号さ、最近うちにいねえんじゃねえか?」
悟空が突然言うものだから、クリリンは驚いた。
「何で知ってんだっ!?」
大きな声を出したクリリンにマーロンは腕の中でビクついた。
「どうも、チチとブルマが絡んでるみたいなんだ」
「ビーデルさんもです」
と、悟空親子が言えば、、
「このところうちに来てるみたいだ」
と、ベジータが言った。
「ええ〜!? そうだったのかっ!?」
「おめでたいヤツだな。自分の妻の動向もわかっていないのか」
「そういうオメエだって昨日まで気付いてなかったじゃねえか?」
「うるさいっ!! カカロットッ!! 貴様とはまだ決着を付けていないっ!! 外へっ出ろっ!!」
「お、やるかっ!!」
ベジータの挑発に嬉々として乗る悟空。
「わあーっ頼むからここで揉めないでくれっ!!」
サイヤ人二人にこんなところで闘われてはたまったもんじゃない。クリリンは慌てて二人を制した。
「そんな事より、お母さん達が何をしているかですよっ!!」
悟飯がそう言うと、
「そうだっ!! こんな事をしている場合じゃないっ!!」
ベジータは本来の目的を思い出したようだった。
「そうだぞベジータ。こんな事してる場合じゃねえぞ」
「お父さんは黙ってて下さい……」
悟飯はまるで他人事のように言う悟空を半眼で睨みつけて言った。
「お前も苦労してんだな、悟飯……」
クリリンはその様子を見て苦笑した。
「そろそろだべ」
「え? 何が?」
突然言うチチにその場にいた女全員がキョトンとなった。
「男供だべ。そろそろおら達の気を読んでここへ来るだよ。全員瞬間移動でな」
「そうなの?」
「悟空さの行動パターンなんてこんなもんだべ。悟飯の入れ知恵でな」
自信有り気に胸を張ってチチは言った。
「……そうかもな……クリリンが『じゃあみんなで瞬間移動で行けば?』とか言ってそうだ……」
と18号が唸る。
「そうですよね……悟飯君が気を読んでみんながどこにいるか探ればいいとか言ってそう……」
とビーデルも納得する。
「ベジータなんて孫君と一揉めしてそうよねえ!!」
とブルマがケラケラと笑った。
「みんなはもう出来たべか?」
「私は出来たわ」
「こっちもバッチリだよ」
「私もです」
「じゃあここへ来ても大丈夫だな」
チチはニッコリと笑った。
「とにかくですね、みんながどこにいるのか気を読んで探ればいいんです」
カメハウスの砂浜に円になって座る男供に向かって悟飯は言った。
「あ!! そっか!!」
「何で思いつかなかったんだ?」
「それはオメエも同じだろ?」
「あーもー揉めるなっ!!」
掴みかからんとするベジータを寸でのところでマーロンを抱いたクリリンは制した。
ベジータは「ちっ」と舌打ちしながらも、これ以上事が進まないのも困るので言う事を聞く事にした。
「とにかく僕はビーデルさんの気を読みますから」
「オラはチチな」
ベジータも何も言わないがブルマの気を読んでいる。
すると、
「え?」
「あれ?」
「……おい……カカロット……」
「みんな一緒にオラん家にいるじゃねえか……?」
四人は顔を見合わせた。
「どういう事だ……?」
ベジータは怪訝そうな顔で悟空を見てくる。
「知らねえよ……どうなってんだ?」
悟空も眉根を寄せた。
「とりあえずさ、みんなで行ってみりゃいいんじゃねえか? 悟空の瞬間移動でさ」
この中で比較的冷静なクリリンが言うと、
「そうじゃねえか!! 瞬間移動だ!! みんな、オラに掴まれっ!!」
悟空はそう言い、三人が自分に掴まっている事を確認すると指を二本額にあててシュンとその場から消えた。
vol.4に続く