novel

□A new relation, a new life
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 魔人ブウとの闘いも終わり、その闘いに関わった者たちは神様の住む天界にいた。
 生き返った孫悟空とその家族、仲間たちは再会を喜んだあと、孫家に遠慮した仲間たちは後日パーティーを催すことを約束して皆それぞれの家路に着こうとしていた。

「ビーデルさん」
 悟空の長男・悟飯は、同級生であるミスター・サタンの愛娘・ビーデルに声をかけた。
「な、何?悟飯くん」
 一度は死んだと思われていた悟飯がビーデルたちの元に戻ってきたとき、一人悟飯の生存を信じていたビーデルは嬉しさのあまり悟飯の胸にすがって泣いてしまった。
 その気恥ずかしさもあり、何だか上手く目が合わせられない。
 それに何だか悟飯の表情が以前よりも精悍になっているような気もする。
 ビーデルの悟飯への気持ちが他の者に向けられるものとは違うと自覚してしまったからでなく、外見も内面も客観的に見て。きっとそれは気のせいではないだろう。

 悟飯は少し様子がおかしいビーデルを訝しみながらも、どこか父親に似て感情の機微に疎い悟飯にとっては何でもないようだ。
 そんな悟飯にビーデルはこっそりと嘆息する。

「家まで送りますよ」
 精悍な顔でニッコリと笑ってそう言う悟飯にビーデルの胸が跳ねた。
 同級生の男の子に、しかも想いを寄せる男の子に家まで送って貰うなんて、そんな少女マンガのような展開はいくら格闘少女であるビーデルであろうとも憧れる。

 ミスター・サタンの娘であり、その辺の男なんかよりもずっと強いビーデルだ。そんなビーデルに憧れこそ抱く人間は数多くあろうとも、こんな風に女の子扱いしてくれる人間は皆無に等しい。
 ビーデルであってもお年頃の少女だ。女の子扱いだってして欲しいと思っている部分も無くもない。

 しかし人知れず憧れたそれは今正に自分の目の前で起こっている。

「そ、そんなっ、いいよっ!!」
「だってビーデルさんは飛べてもサタンさんは飛べないでしょ?」
「へ?」
「さすがにビーデルさんがサタンさんを抱えて飛ぶわけにはいかないし。だから僕が」
「……そういうことね……」
 
 溜息が出た。
 この純朴で鈍い男に恋する乙女の感情を理解できるはずもない。
 そんなことわかってたではないか。

「ビーデルさん?」
 ビーデルの心中を察することもなく、悟飯は首を傾げてビーデルの顔を覗き込む。
「どうしたんですか?」
 思いのほか近い顔にビーデルの顔は真っ赤になって、心臓もまたもや跳ねる。
「なっ、何でもないっ、何でもないからっ!!」
 手をブンブンと振る。
「そう?」
 相も変わらずキョトンと首を傾げている。
 いくら精悍な顔付きになったとは言え、この男の本質は基本的に変わっていないらしい。

「じゃあ送って……」
「いいっ!!」
「どうして?」
「だ、だって……」
 ふと視線を彼の向こう側に向ける。
 そこには生き返ったばかりの彼の父親と涙ぐんで喜んでいる母親、そして生まれて7年目にして初めて父親と触れ合った彼の弟の姿。
 互いが互いとの再会を喜び合っている。
 聞けば初めて家族4人が揃ったと言う。
 そんな姿を見ると邪魔したくないと思う。

「私たちは大丈夫。気にしないで」
「でも……」
「大丈夫よ。だってほら」

 ビーデルが指差した方を見ると、ミスター・サタンと魔人ブウが犬を交えてこの世に生還できたことを喜んでいる。ただまわりの人はブウのことを警戒しているようだが。しかしブウはそんなこともお構いなしに楽しんでいるようだ。

「魔人ブウがいるもの。うちで預かることになったから」

 その場にいた悟空の仲間たちはあれだけのことを仕出かしたブウを警戒し地球で暮らすことを反対したが、悟空の後押しもあり、サタンがもう二度とブウに殺生をさせないことを約束し、ブウもサタンが言うならとそれを了承したことにより仲間たちも渋々ながら地球に留まることを認めた。
 それ以前にサタンのためにもう悪事を働くこともなかっただろう。

「ブウがパパを運んでくれるわ。私は自分で飛べるし」
 ビーデルは自分よりも背の高い悟飯を見上げて言った。
「魔人ブウが一緒なのよ。これ以上の安心ってないと思わない?」
 そして片目を瞑って笑った。
 悟飯はそんなビーデルの言葉に呆気に取られたが、
「確かに」
 ビーデルにつられるように笑った。

「それに……」
 ビーデルは悟飯の向こう側に視線を向けた。
 悟飯はビーデルの視線を追うようにそちらに顔を向ける。
 そこにはやっと揃った自分の家族。

「やっと家族が揃ったんでしょ?やっぱり今日は家族で帰るべきよ」
「ビーデルさん……」
「おじさんもおばさんも悟天くんもあんなに嬉しそうなんだもの。悟飯くんも一緒じゃなきゃ」
 ビーデルはそう言って微笑んだ。

「ありがとう、ビーデルさん」
 悟飯も嬉しそうに微笑んだ。その顔は精悍になったとは言えどこかしら子供っぽく見えた。


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