novel
□Succeeded desire
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悟空が生き返ってしばらく経った頃……。
ある晩、悟空は夢を見た。
「どこだ? ここ」
何もない真っ白な空間。
天国にも行ったことのある悟空だが、こんなところは初めてだと思った。
何もない、ただ真っ白な空間。そこに自分はただ立っている。
何もないのに不思議と不安はない。妙に安心できる空間でもある。
どれくらい、この空間に佇んでいただろうか?とてつもなく永い時間のようで、ほんの一瞬のようにも感じた。
すると、何もないと思っていた空間の向こうに何か影が見えた。
それは人影のように見える。
その形は自分と同じ。
なんだ。オラの影か。悟空はそう思ったのだが、動きが自分のそれとは違う。
(あれ? 変だな)
そう思ってしばらく眺めていると、その人影だだんだんはっきりとしてくる。
そして、その人影がどういうものかわかった時、あまりの驚きに暫く声が出なかった。そしてやっと出た声。
「え……オラ……?」
確かに顔は自分。しかし、その姿と目付きは自分とは違う。額には赤いバンダナ。服装はベジータが着ていたようなサイヤ人の戦闘服。
そして、顔に傷があった。
「よう、カカロット」
その人物は悟空のサイヤ人名であるその名を口にした。
「……もしかして……父ちゃん?」
その人物は悟空、いやカカロットの父・バーダックだった。
「何で?」
「お前がこの宇宙を守った褒美ってヤツだ。父親のオレにもおこぼれがきた。お前に会えってさ」
バーダックはそう言うと、悟空の目の前までやってきた。
「時間はほんの少ししかない。だが、これと言って言うこともねえしな」
そう言うバーダックの顔は少し赤らんでるようにも見える。
「父ちゃんて、ホントにオラにそっくりなんだな。オラびっくりしちまったぞ」
悟空は目を丸くして言う。
見れば見るほど自分に似ている。悟空は目つき以外は瓜二つな父を見て驚愕する。
悟飯も悟空によく似ている。悟天は悟空のミニチュアと言ってもいいくらい瓜二つだ。
ここに息子たちもいたら……そんなことまで考えた。
「オレがお前にそっくりなんじゃねえよ。お前がオレにそっくりなんだ」
「ハハッ、違いねえや」
その瞬間、親子の間にあった壁のようなものが無くなったのがわかった。
「まさかお前が地球で頭を打ってサイヤ人のやるべきことを忘れるとはな……でも、そのお陰でフリーザを倒せたんだがな」
フリーザとの闘いは思い出しても虫唾が走る。クリリンを目の前で殺され、その怒りのため超サイヤ人になった。得たものは大きかったが失ったものも大きかった。
「まあそんな顔すんなって」
バーダックは複雑そうな息子の顔を見て苦笑した。
「お前がフリーザと対峙する姿を、オレは死ぬ時に見た」
「へ?」
キョトンとする息子の顔を見て、バーダックはコイツが本当に超サイヤ人で、この世界を守ったのか?と疑問に思えてきた。
「……まあ、お前ならやると思ったさ」
予知する力を与えられ、サイヤ人の行く末を見せられた。その絶望に抗う為にたった一人で闘い、そして力尽きた。
その死の間際、見たものは生まれたばかりの我が子が成長し、憎きフリーザと対峙する姿。
この息子なら自分の思いを遂げてくれるに違いない。バーダックはそう感じた。
それが叶った。この息子がその思いを遂げてくれた。サイヤ人全員の思いを。
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