オリジナル詩集♪

□『45分間』
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この時間は私と彼を結ぶ時間。
空を飛んで今、貴方に会いに行きます。





『45分間』





毎年年賀状を見ては増えていく子供達の笑顔。
とうとう今年が最後なの。

貴方に会いに行くために、空を飛んで45分間を駆け抜ける。


「いらっしゃい、お前は変わらんなぁ、すぐわかったぞ。」



貴方の笑顔は12年の月日がたっても変わらなくって、自然と笑みが溢れる。


近くには遠慮がちにこちらを覗く二つの影。


「こんにちは、初めまして。」


声をかければ笑顔で此方に駆け寄ってくる。

全く、笑顔さえ複製品のようである。



色々な所を案内してくれる貴方。


「先生、先生!!」

振り向いて欲しくてずっと側に寄り添っていた。


今、その私の指定席は別の人物が独占している。

貴方の子供達。


とうとう上の子は10才になってしまったようだ。


月日を感じたのは私だけではなかったようで、

「いつもここに居たのはお前だったなぁ。」

と苦笑しながらも、幸せそうな笑顔で答えた。




お宅にお邪魔させて頂けばさあ大変。
先生、もう一人子供がいて、計三人。


ドッチボール何かをして貴方の複製品と戯れる。
皆やんちゃで、まるであの頃に戻ったみたいで。


少し離れた所から私たちを見ていた先生は「全く、本当にあの頃から変わらんなぁ。」と。


私の中では色々あった。
月日は流れ、貴方に三人も子供ができた。



芝生で遊んでいる時、不意に童心に帰った。
もしかしたら私の定位置を取り戻りたかったのかも知れない。

えい!っと同時に貴方の背中にしがみつく。
暖かくて、覚えていない父の香りがした。




帰りの空港、末の娘を抱きながら貴方に受け渡す。
その手に光る銀の指輪。

私の腕に光る銀の時計。


年月を感じた。




今度は貴方に会うために、空を飛んで45分間を駆け抜ける。



「お帰り。帰ろうか。」



その腕には銀に光る時計。


私は貴方が好きでした。
子供ながらに大好きで、大好きで。
いつも貴方を独占したかった。

でも、今度は貴方の子供達の成長を見守ろう。
貴方が私にしてくれていたように。


その代わり、今の私には幸せがある。

右手に輝くそれは誓いの指輪。
貴方なりの精一杯の誠意。


先生に比べて、不器用だし、何をやってもヘマをする貴方が、今の私の最愛の人。



さようなら私の初恋。
あの頃に戻れるならまた貴方の横に並びたいけど、
今は私を守ってくれる人がいる。
助けてくれる人がいる。



恋は甘くて切ないけれど、私に大切な物を残してくれた。


貴方に会いに行くために、空を飛んで45分間を駆け抜ける。

今度は貴方の子供達に会うために、私は空を飛んで45分間を駆け抜ける。










end
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