プレゼントされちった

□くーもん様
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うふふ。sweet paradaiseから頂きました。これがとても胸キュンなSSなのですよ。それではどうぞ。



加賀友禅

抹茶色の竹林。
多くの竹の影が土を湿らせている。
おかげでトコトコ歩いている緑と黒のカエルの足の裏
はひんやりしていた。
猛暑の中でも涼やかな気分になる。
「タママの体、色替え作戦の時みたいに中性的になっ
ているでありますなあ。」
「軍曹さんもセクシーイェローですぅ♪」
竹林の下、ふたりは自然に微笑み合っていた。
所処黄金に染まる竹・・・
木漏れ日が竹林、そしてケロロとタママに優しく振り
注いでいる。



「着いたですぅ♪」
「こりは風情がありますなあ。」
秋奈の家のような懐かしい民家・・・
竹林も民家も西澤邸の敷地内にある。
ちょっとした余暇を楽しむために作られているのだ。
小さめな民家だが、手をつないでいる小さな宇宙人達
が見上げるととても大きく感じる。
「縁側ですぅ♪」
タママはケロロを導き、縁側に登った。
障子が開けっ放しなので、そのまま和室に入った。
部屋中に畳の香りがプーンと匂う。
「これから我輩とタママがここで我輩の大福を食べる
でありまーす♪」
「なんか説明口調ですぅ。しかもカメラ目線。」
タママは茶碗にお茶を入れながら言った。
和室の掛け軸には「勝利至上」とかがげられている。
いかにも西澤家らしい。
「用意できたですぅ♪」
タママの持つおぼんの上に茶碗と大福がのせられてい
た。
「おー、サンキュー。それじゃあ。」
ケロロとタママは珍しくドロロと小雪のようにきちん
と手を合わせた。
「いっただきまーす。」
黄色い声がはもる。
あいさつと同時に大福をほおばった。
「んー、軍曹さんの大福もちもちしておいしいですぅ
♪」
タママはとても嬉しそうだった。
ほっぺがリス袋のようになっている。
「ふう、癒されるでありますなあ。仕事の疲れがとれ
るぅ〜。」
ケロロは畳に思いっきり足を伸ばし、くつろいでいた

チリーンチリーン
うっすらと星が刻まれた紫の風鈴の音が内にも外にも
かすかに鳴り響く。
「ププ、それは絶対提出物を一夜漬けした疲れですぅ
。」
「ゲロ、作戦山ほど考えているから提出物遅れるの!

ケロロはぷくうっとホッペを膨らませて拗ねた。
チリーンチリーン
タママはケロロの顔に笑いながら、タンスから織物を
取り出した。

「こりは・・・?」
薄い紅色と紫の織物。
どちらとも様々な草花や鳥が写実的に彩られている。
あまりの美しさについため息をついてしまう。
「ぐんそーさぁん、今度の新宇宙開港10周年花火大会
一緒にこの加賀友禅の浴衣着るですぅ♪」
タママはニコニコしていた。
体からハートがたくさん飛び出ている。
「・・・タママ。」
「はいですぅ。」
ケロロは友禅の方に目を向けながら言った。
「これ・・俺とおそろいの浴衣を着るためにわざわざ
買ったの?」
「えっ、いや・・・。」
ケロロがほんの少し真面目モードになったので、タマ
マはドキっとした。
今まではノリノリだったのに、今はカチンコチンにな
っている。
「モ、モモッチがフッキーとのお祭りのために買った
織物の余りをボクが買っただけですよお、アハハ。」
タママは意味もなく紫の織物の裾を手でペラペラ動か
していた。
「加賀友禅って伝統工芸品だよね。不景気で給料低下
なのに買ったんだ。」
ケロロの黒い大きな瞳がタママをまっすぐ覗く。
そのせいでますますドキドキしてしまう。
タママは顔をそっぽ向ける。
「そ、それはボクのコンセプトデザインのマシーンの
費用のために貯めたお金がたくさんあるからですぅ。
ボクは軍曹さんと違ってお金持ちなモモッチの家に住
んでても貯金はちゃんとしてるですぅ。」
そうタママが言った後、タママは顔をうつむいた。
ケロロはしばらく無言だった。
沈黙がますますタママをそわそわさせる。
そして、やっと口を開く。
「タママ・・。」
ケロロは両手でタママの手を包んだ。
「タマァ・・・。」
タママの手の脈絡が早くなる。
「・・・半分払うであります。」
ケロロはまっすぐタママを見つめながら言った。
タママは一瞬目が点になった。
しかし、なんとか言葉を出した。
「べ、別にいいっすよ。軍曹さんはいつもおこづかい
ピンチだから期待してないですぅ。」
「いや、大丈夫であります!もっと家事労働すればお
こづかいアップするであります。」
「アップする知恵があるなら、侵略資金増やす方法を
考えるべきですよお。」
「だ・か・らおこづかいアップのノウハウを資金に活
かす予定だっちゅーの。タママこそマシーンの貯金を
織物に使うのはもったいないであります。上司が部下
の物をおごるのが常識なんだからさ。」
「ボクはもっともーっとお金お金貯められるから大丈
夫なんですぅ!そんな常識クソクラエですぅ!」
ケロロとタママは意味のない口論を繰り広げていた。
ゼロ距離でお互いの顔を押し合い、張り合っている。

ドカーンドカーン
突然爆撃音が家に鳴り響いた。
「ケロ!?」
「タマ!?」
ドン
ケロロとタママは驚きのあまり飛び上がり、友禅の下
に隠れた。
「ボ、ボクちゃんとモモッチにこの家の使用許可を取
ったですぅ。ボクは悪くないですぅ〜。」
「落ち着くであります、タママ二等。桃華殿達が友好
なふりをして我輩達と全面戦争するって思っちゃいけ
ないでありますよ!!」
織物の膨らんだ部分がガタガタ震えていた。
ケロロとタママは汗びっしょりで抱き合っていた。
歯軋りまでしている。
「モモッチのオカンが来たらボク達おしまいですぅ〜
。」
「タママ二等、お菓子を思い浮かべるんだ。あの世に
行っても悔いが残らないために・・・。ガンダム1分
の1・・・。」
ガタガタ
ブルブル
たんだん小声になるケロロの声。
何もなす術がないという空気が充満していた。
ピー
「ケロ?」
「タマ?」
笛の音と同時に爆撃音が鳴り止んだ。
「レベル5対策防衛訓練、以上で終了であります!皆
様お疲れ様でした。敬礼!!」
「ハー!!」
外から野太い声が聞こえる。
「なんだ、ただの訓練でありましたか。びっくりした
あ。」
「もう、ポールったら。前もって言ってくれれば良か
ったのに・・・。」
ケロロとタママはため息をついた。
ポコペン人にはいつも驚かされると・・・。



(あ・・。)
一安心した所、タママとケロロは自分達の周りの世界
に目が奪われた。

紅色と紫が交差するセカイ・・・
セカイの至る所に咲き乱れる花々・・・
その花に戯れる鳥・・・
幻想的で生命力に溢れる空間がそこにある。

「タママ二等・・・。」
「軍曹さん・・・。」
ふたりはお互いを呼び合った。
抱き合い、見つめ合う・・・。
何も話さなくても、相手も自分もこの世界に対する気
持ちが同じだという事が理屈ではなく分かる・・・。

一羽の鳥が花の蜜を吸っている。
ケロロはその鳥に注視した後、顔をタママに近づけた

タママはケロロの反応にこくりと頷き、静かに目を閉
じる・・・。

チュッ

友禅の下、世界を共有し合うふたり・・・。

風鈴も家も竹林も、彼らの世界を見守っていた。
end.

きぃやー!このあとの展開をあれこれ考えてしまいました。もちろんラブラブランデブーですよね、軍曹さん。
くーもん様、素敵なSSをありがとうございました!

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