tamama said.
□あなたの知らない私
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「タママ〜、カッティングナイフ取って」
MGガンタンクのガンプラから目を離さずにケロロは、まるで手術中の医者のように後方に手を差し出した。
しかしそれに応じる者は居なかった。
代わりに同じ室内で銃器の手入れをしていたギロロが答えた。
「タママは今日はいないぞ」
「あ・・・そっか。タママ、休暇中だったっけ。」
仕方なくケロロは自分でカッティングナイフを探し始めた。いましがたの行動に自分でも赤面してしまう。
いつもは気にもとめないのに、なんだか今のって・・・
「なんだか長年連れ添った夫婦みたいだな」
その言葉に照れたケロロは少しぶっきらぼうに普段から思っていたことを口にした。
「全く、一体いつもどこで何やってんだか。我輩にくらい教えてくれてもいいっつの」
「あらーぁ?隊長はガキの行き先知らないんスか?」
やはり同じ室内で無言でパソコンをいじっていたクルルは意味ありげに笑った。
「・・・なによぉ。クルルはタママの行き先知ってんの?」
その問いに答えず、クルルは嫌味な笑いを浮かべたままパソコンの画面から視線をはずした。
その様子に一層ケロロは苛立ちを覚えた。
「タママはたまに作戦に参加しない事があるよなぁ。それに日向家に基地があるのに西澤家に留まるのには訳があるって事さ」
「そ、その訳とは?」
クーックックックとケロロを見据えながらクルルは笑った。
「知りたいか?」
ケロロはごくりとのどを鳴らし、瞬きせずに頷いた。やけに間を持たせようとするクルルにいい加減切れそうだが、自分を必死で落ち着かせる。
ケロロはじっと出方を待った。
その様子を楽しげに眺めながら笑うだけのクルルに、部外者のギロロも銃口を差し向けたくなった。
しかし、ケロロが我慢しているのだ。
そう自分を宥め、無言のままに手元の銃器を磨く。その手に無意識に力が入った。
やがて、クルルは嫌味な笑い声を上げた。
「クーックックック。・・・・・・知らね」