SSその2

□ぬくもり
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長い長い長蛇の列で、ただひたすら自分の番を待っていた。
時計回りに訪れるゆりかごのようなゴンドラに順番に一人ずつ乗せられてゆく。カラフルなゴンドラは目に眩しかった。
赤、青、黄色、桃色…

ようやく自分の番が回ってきて、心臓が高鳴った。あの金色のゴンドラが自分のものだと思うと嬉しくて早く乗りたくて、うずうずした。

ゆっくり降りてくるゴンドラに、かけよろうとした僕の体を遮るものがあった。
見上げると、係の大人が僕を掴んでいた。

僕のゴンドラではないというように、他の子供を乗せてゴンドラは上昇していった。

その後も、次々とカラフルなゴンドラが波止場に止まっては去っていくのを見ていた。
ずっと、ずっと。

待ち続けて僕の体はぼろぼろになっていった。
雨にさらされて、泥だらけになって。
黒い僕を誰も拾い上げてくれる人はいない。

それでも待ち続けた。

待ち続けて、何を待っているのかさえ分からなくなった時、それは訪れた。

突然目の前に現れた星。
僕は汚いですよ――…
そう問いかけるも相手に伝わるはずはなかった。
僕は人形だったから。
それでもその人は嬉しそうに僕を持ち上げ、埃を払ってくれた。

その人の腕の中は、泣きたいくらい温かくて。ああ、僕はやっと落ち着ける場所を見つけた。



という、よく分からない夢を見た。
気がつけば背中の上にいた。

ああ、軍曹さん。
なんの疑問もなく思った。
幸せで、泣きたくなる。
石ころみたいにちっぽけな僕の手を引いてくれる人。
友達と呑んでいたのに、軍曹さんにおんぶされてる。
これも夢の続きなのかな…
ゆらゆら揺られる背中が居心地良くて、眠たいのに眠れない。
起きてるってバレたら、軍曹さんは僕を降ろすのかな。
ぎゅっとしたい気持ちを噛み殺して、背中から心音を聞いている。
ズルしてごめんなさい。
でも、もう少しこのままで居たいの。
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