tamama said.
□果てない午睡
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「クールルせんぱーい」
精一杯甘えた声で、要危険人物クルルに話しかけるタママ。
だが、肝心のクルルはせわしなくキーボードを叩きながら無視を決め込んでいる。
甘え声も、巨大なモーター音に掻き消されていった。
「返事くらい・・・してくださいよぅ」
最初から意地悪される事位、タママにだってお見通しである。
「もう、そんなクルル先輩には。えいっ!」
「ああ、メガネメガネ」
タママに背後から眼鏡をかっぱらわれ、クルルは焦った。両の手が空しく空を彷徨う。
「ちゃんと返事しないからですぅ。返して欲しければ、僕の言う事をきくですぅ」
目の見えないクルルの耳元に悪魔の笑みを浮かべながら、タママは囁きかけた。
「俺様をなんだと思ってやがる・・・」
タママから奪還した眼鏡をかけると、別人のような声音でクルルはすごんだ。
恐らく、その眼鏡の奥は眼光鋭くしているはずだ。
クルルは無言のまま、右手を耳元にもっていった。
思わずタママは小さく喉を鳴らした。
慌てて耳に手をあて、苦手な音から逃れようとしたが、時、既に遅し。
クルルはその手をヘッドホンにあてた。
タママはたまらず手を耳に押さえつけた。
が、頭上から大量の飴玉がタママ目掛けて落ちてきた。思わぬ攻撃に、流石のタママも避けられず直撃した。
色とりどりの包み紙に包まれた飴は硬く、タママは涙目になりながらよろめいた。
「あだだだ・・・もぉ!痛いですぅ!!・・・でもこの飴は僕のものですぅ」
怒った口調だが、体は正直なようでタママはニヤけながら俊敏に飴玉を拾い出した。
「それじゃそれ持ってけえんな(帰りな)」
「はいですぅ・・・って、そうじゃないです!」
うっかり流されそうになり、当初の目的を果たせないところだったと内心、冷や冷やしながらタママがクルルに食らいついた。
「ちょっとお願いがあるんですぅ」
「えータママ君は俺様に何してくれるってんだい?」
さも気だるそうな某読みの返答が返ってきて、タママは唸った。
「じゃあ、千円」
「は。子供かよ。」
「じゃあ、二千円」
「だから、金じゃねーっつーの。」
クルルは一呼吸置くと、やっとタママの方にくるりと椅子を回した。
手を組み肘掛に乗せている。
いかにもどこぞの中小企業の社長のようだな〜とタママは言った。もちろん、心の中で。
「ふ、おめぇがさっき飲んでいた飲みかけのコーラ。あれで手を打ってやる」
その言葉に、タママは拍子抜けした。
「ほ、ほんとですかぁ〜!」
そんなこと容易い御用とクルルの気が変わらない内に無理やりコーラを渡した。