tamama said.
□斉藤さんにうってつけな夏
5ページ/10ページ
その異様なオーラは空気を介してビリビリとタママの肌に伝わってきた。
タママはふっと目を閉じた。
それだけでそのオーラの持ち主がハイレベルのグラップラー(格闘士)であるかが分かる。それも今まで出会った中でもトップクラス、否、最強に値するかもしれない。
その熱量を感じただけで、タママは魂まで震えた。至高の戦いが出来るかもしれないという歓喜によって起こる快楽がゾクゾクと背を伝い、全身に駆け巡った。
一流のグラップラー同士は惹かれあうものだ。
「あんた、俺にホレてるですぅ」
ニヤリと笑い、タママは呟いた。
しかし、そのオーラの気配はタママからどんどん遠ざかって行く。
慌ててタママは周りを見渡した。
「えっ・・・なんで?」
熱源の元は意外にも冬樹の後をつけるようにふらふらと軌道の読めない空中蛇行を続けている。
冬樹とその熱源の距離は次第に縮まり、やがて冬樹の尻の辺りでぴたりと浮遊しながらクルクル回っている。
タママがそっと近づくと、神聖なオーラ以外に邪まなオーラもかなり混じっていることに気がついた。
タママはこんなオーラを見たのは初めてだった。
「な・・・なんか妙に悪寒がするですぅ」
本能がソイツと関わるなと叫んでいた。
しかし、グラップラーである自分がそれを許すわけがない。
折角見つけた獲物ですぅ!
意を決して近づくと、そのオーラの中心が赤いカブト虫だと分かった。
以前、スーパーカブト虫と対戦した事があった。あの時のトモとの戦闘で味わった高揚感は今も忘れられない。
かのスーパーカブト虫は清清しい青春の一ページのような爽快感があった。
だが、この赤カブトには、手負いの熊のような猛々しさと変態臭さを感じてならない。
躊躇したまま尾行していたタママの目の前で、赤カブトはおもむろに履いていた赤いパンツをおろした。
パサァ・・・
小さな赤いパンツが地面に落ちる。
その0コンマ何秒の間に、赤カブトは冬樹に襲い掛かろうとしていた。
「ちょおおおおおと、待ったですぅ!!!」
コレはデンジャーな生き物。
そう思ったタママは叫びながら、相手の返答も待たずにタママインパクトを放出していた。
しまった!フッキーが居たのを忘れていた。
だが、時既に遅し。
タママの放ったタママインパクトは冬樹もろとも赤カブトに襲い掛かろうとしていた。