Orikyara Side

□ピアノ・バーボン・それから、愛
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こんな夜中に子供を連れ回すだなんて非常識だ。
如何にも世間知らずそうな女がしそうな事だと思った。

…まさか、その背景が自分に負けず劣らず波瀾万丈なものだと当時は思いもよらなかった。
私もまた未熟者だったのだ。

にこやかに微笑みながら女の腹が鳴った。
続けざまに子供の腹も鳴った。

「…何も食べてないんですか?」
へたすれば命の恩人だ。とりあえず聞いてみる。

「実は朝からなんにも…」
それなのにあんな大男を瞬殺したのには驚いた。
小さな子供が不安を抱えた目でこちらを見ている。
どうも訳ありのようだ。
私は小さく溜息をつくと、二人に言った。

「よかったらうちに来ない?行くとこ、ないんだろう?」

普段の私ならば簡単に人を信用などしない。しかも行きづりで訳ありの人間など面倒以外、何者でもない。
どんな善人ヅラをしていても裏のある人間などごまんと見てきた。

しかしこの女からは全ッッッく悪意を感じることが出来なかったし、天使のような子供の瞳に母性本能が疼いた。
自分でもどうかしていると思いながらも、放っておくことが出来なかった。

騙された時は、そん時。
何もかも失くす覚悟で私は二人を迎え入れた。

そんな私の覚悟を知らずか、女は嬉しそうにやんわりと微笑み礼を述べ、お腹を鳴らした。
あまりの能天気さに思わず笑みが零れた。

「あたしはサララ。あんたは?」
「ウララです。よろしくお願いします。この子はタママです。」

タママのほっぺは寒さで赤林檎のようだった。
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