そうです私が、雑務部部長!

□ほんぺん。
1ページ/12ページ


雑務部。
俺がもしもまったく普通の高校生であったならば耳慣れない言葉に首を傾げるところだろう。
哀しいことに、そうならないことが現実なのだが。
野良猫は一度人間に世話されることを知ると、その人間が生半可な気持ちで構ってきていただけだったとしても野生では生きていけなくなるらしい。
まあ、それは大袈裟すぎる例えだが、俺の気分はだいたいそうだった。
要するに、雑務部なんていう例外だらけで特殊すぎる部活なんて知らなければ良かった。
しかも、それの創設者が俺の妹だなんて。

「いまだ信じられず」
「再読文字」
「そーゆー話してんじゃねーの。楪菜」

妹の額の中心をめがけて渾身のデコピンを喰らわせてやった。
ラリアットでも喰らったように体を後ろに反らせて痛みを表現してくるが、いつものことなので俺は気にしない。
俺の放課後をツブす礼がデコピン一発なのだから感謝して欲しいところだ。

「で?今日は何だ?もう寮長の猫捜しは嫌だぞ。あの人もたまには運動すればいい」
「ないよ」
「は?」
「だから、今日は依頼ゼロ!」

にっこり。
太陽をガン見しながら精一杯背伸びしている向日葵でさえ怯みそうなくらい明るく笑う。
俺は一度肺が満タンになるように息を吸って、空ッポになるように吐いた。
吐息と一緒にもやもやした何かが流れだし、少し気がおさまった。でないと妹に向かって怒鳴るところだった。

「ざけんな」
「あでっ!!」

おもいきり脳天に拳骨を落としてその話は終わりということにした。

「だから春香先輩いないのか」
「痛いよーっ!本気でやることないじゃないっ!!」
「でも仕事ないのになんで楪菜は俺を呼んだんだ?」
「…………宣伝活動」

抗議をすべて馬の如く流すものだから無駄だとわかったのか、しぶしぶ開いた口からは、またもや訳のわからない言葉が飛び出した。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ