SSベジブル

□An Ideal Husband
〜理想の夫〜
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ブルマのラボで渡された小瓶。

チチは水筒にそっと入れた。


「悟空さ、ホレ弁当と水筒だ。」

言って悟空に渡す。

「おぅ!サンキュー!」

悟空は言うが早いか家を出て行った。

遠くなる背中を見送りながら少々不安になるチチ。

「ホントに悟空さに効くのか…」

しかし期待もある。
いつも修行の事しか考えてない風の夫。
そういえば、デートなんて言うのはしたことがない。
昔悟空とカメハウスまで行った…のはデートにならないだろう。

普通に、オシャレなお店でご飯食べたり、景色を眺めたり、愛の言葉を囁かれたり…

やっぱり一度はしてみたい。


デートしようなんて言われたら、何の服を着よう?
そんな事ばかりが頭の中を駆け巡った。




ちょうど12時の鐘が鳴る頃。

お腹が空いた悟空は、弁当を食べられる適当な場所を探していた。


良さそうな木の下に老人が座っていた。
なんだか様子が変だ。

「どしたんだ?じっちゃん」

悟空は声をかける。

「…足をくじいたようでのぅ。」

いきなり現れた青年に驚きつつも老人は答えた。

「そっか、でぇじょうぶか?」

見ると足首が少し腫れている。
それより、顔色が悪い事に気がついた。

「じっちゃん、顔色わりぃぞ?なんかあったか?」

悟空は老人の前に屈む。

「いや…喉が乾いてのぅ。足が痛くて動けんし…」
「じゃあオラが水汲んで来てやるよ」と言いかけて気が付いた。
今日はチチが持たせてくれた水筒がある。
悟空は水筒を老人に差し出した。

老人は礼を言うとお茶をみんな飲んでしまった。
相当喉が乾いていたらしい。

「じっちゃん、家近くか?オラ連れて行ってやるよ。」

その時、悟空の腹が鳴った。

「…っとと。その前に飯食っていいかな?」

悟空の笑顔に老人もつられて笑い、「もちろん」と答えた。


「お前さん、結婚しとるのか?」

「おぅ。子供も二人いっぞ。」

悟空の食べっぷりに圧倒されながら老人は言った。

「そうか。ワシは妻を亡くしてな。生きとる間にもっと色々してやれば良かったと思ってなぁ…」

「そっか…」

「せめてばぁさんが好きじゃった花を供えてやろうと出掛けたら、この有り様じゃ。」

「よっし!じゃあ、花摘みに行くか!」

ものすごいスピードで弁当を平らげた悟空はニカッと笑って老人をおんぶした。



その場所は、道から少し離れた小さな湖のほとりにあった。


「へぇ!綺麗なもんだな。」

湖と花と山と空。
情緒をあまり理解出来ない悟空でも、その場所は美しいと感じた。


「昔ここでばあさんに愛の告白をしてな。ばあさん泣いて喜んでたなぁ。」

老人は言いながら花を少し摘んだ。

「そっか…女はなんだって花が好きなんだろぉな。オラわかんねぇ。」
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