SSベジブル
□歌
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「あなたと〜逢ったその日から〜♪」
重力室の整備をしながら歌うブルマ。
汗を流してから様子を見に来たベジータは、スポーツドリンクを飲みながら近付く。
「…」
聞くと奴隷がどうとか言っている。
「オイ。お前奴隷は嫌じゃなかったのか」
以前『私はアンタの奴隷じゃないのよ!』と言われたのを思い出し、眉間の皺を深めて言う。
歌っていたブルマは歌を続けながらくるりと振り向き
「恋の奴隷になりましたぁ〜」
とベジータの皺の入った眉間を指で押し、歌いながら作業に戻った。
恋の奴隷?
イマイチ理解出来ないが、とりあえず、嫌な感じで歌ってる風ではない。
まぁいい、俺には関係ない、とベジータがその場を去ろうとすると、ブルマの声が大きくなってきた。
「だから〜ずっとそばに置いてね〜邪魔しないから〜♪」
ベジータはピタリと足を止めた。
『俺に向かって言ってる?』
まるで自分達に当てはまるかのような歌詞に少しドキっとする。
「悪い〜時は〜どうぞぶってね〜」
ブルマの声が近付いて来ているのに気付き、体ごと振り返る。
「アナタ好みの…」
振り返った瞬間、首に腕を絡められ、じっと目を見つめられた。
「な、なんだ…?」
青い瞳が美しい妻。
ベジータは動揺と緊張で顔を赤らめたが、視線はそらさない。
そらすと、なんだか負けのような気がした。
いつの間にか壁際まで追いやられていたベジータは、ついに壁に肩がついた。
「アナタ好みの…オンナに〜なりたい…」
ブルマが特別セクシーに歌い終える。
「〜〜〜ッッ!?」
もう目を合わせていられなくなったベジータは慌てて視線を外す。
ブルマはベジータのこういう所が好きだ。
強面でいつも機嫌悪そうなのに、ちょっとからかったら、真っ赤になって困っている。
つい追い討ちをかけてからかいたくなる。
「ヤダ。耳まで真っ赤。」
言ってベジータの真っ赤に染まった耳を甘噛みする。
ベジータがピクリと体を震えさせたので、焦ってる顔でも見てやろうとブルマが顔を覗き込んだら…
「…ほぅ。」
言うと同時に右手は首に絡み付いていたブルマの腕を取り、左手は腰に回し、ブルマの体を引き寄せた。
「いい心掛けだ。」
ニヤリと笑う夫の顔は、もう先程の余裕のなさそうな可愛い夫の顔ではなかった。
「あ…」
鋭い眼力に射抜かれ、さながら狼と兎。ブルマが気付いた時には唇を奪われていた。
…−
「もぅっ…かっ…かんべんしてっ…」
寝室。
ブルマのつらそうな声が響く。
「ゆ、ゆるして…」
ベジータは構わず行為を続けた。
「オレ好みの、オンナにしてほしいんだろ。」
『そういう意味じゃあ…』ない、と言いかけて…違う事もあり、違わない事もあることに気がついた。
ちょっとからかってやるつもりが、いつも、いつの間にか、態勢は逆転し、こういう事になる。
「あぁ…もぅ…だめ」
ブルマが意識を失う。
「…フン」
ベジータは意識を失ったブルマの身体にシーツをかけ、うなじにキスをした。
「言われなくてもオレ好みだろ。」
ブルマには届かない言葉を呟き、バスルームへ向かった。
―おわり―