SSベジブル
□An Ideal Husband
〜理想の夫〜
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悟空は頭をかきながら言った。
「おなごは綺麗なもんが好きなんじゃ。おなごも綺麗じゃろう。それに…好きな人から貰うって言うのがいいんじゃろうて。」
老人はニッコリ笑って言う。
「そうなのかぁ。」
悟空はもう一度辺りを見渡す。
確かにこの場所は綺麗だ。
悟空は老人をおんぶすると、老人の家まで向かった。
着くと、娘らしい女が出て来て何度も礼を言い、お礼に、と小さな箱を手渡した。
開けてみると、あの場所で咲いていた花で出来たブローチで、娘が作ったんだと言う。
もちろん造花だったが、あの場所を見た後だったので一層美しく感じた。
「いいか。渡す時は"いつもありがとう。愛してる"と言うんじゃぞ。」
老人はウインクして言った。
悟空は「まいったな〜」と頬をかきながら言ったが、一つ頷いて老人達に別れを告げた。
家に帰った悟空はチチを見つけると抱き上げて飛んだ。
「ご、悟空さ!?」
突然の事に驚いたが、ふと気付く。
『ははぁ。ブルマさの薬が効いてるだな。』
そう思ったチチは悟空にしがみつき、前を向いた。
もう陽が暮れようとしている。
夕日が綺麗だと見とれていたら、いつの間にか地上に降り立っていた。
「チチ、こっちだ!」
チチの手を引き走る悟空。
「ご、悟空さ!いきなりなんなんだ!?…あっ!!」
突然視界が開け、美しい光景が目に入る。
その場所は、昼間とは少し違っていたが、夕日に照らされ、湖が赤くキラキラと輝いていた。
「…きれい…」
チチが見とれて立ち尽くしていると、悟空がしゃがんで花を摘み、チチに差し出した。
「ホラ、チチ!」
花を手渡されて胸が一杯になった。
悟空がこんな事してくれるなんて…
「今日たまたまこの場所見つけたんだ。どうしてもチチに見せたくてよ。」
景色を見る悟空の横顔が夕日に照らされる。
「それから…」
悟空は何やらポケットをゴソゴソ探ると、小さな箱をチチに手渡した。
開けてみると、先程差し出された花と同じ花で出来たブローチが入っていた。
「チチ、いつもありがとな。…それから…えーっと…愛してっぞ。」
ポリポリと頬をかきながら言う悟空に、チチは言葉を失った。
「うわっ!チチ、なんで泣くんだよ〜!?…おっかしいな〜」
喜ぶ、と聞いていたのに、チチはボロボロと大粒の涙を流していた。
「チチ、オラなんかわりぃ事言ったか?泣くなよ〜」
悟空は慌てて胴着でチチの頬を拭う。
「悲しいんじゃねぇだ。嬉しいだよ…」
チチは悟空の胸に飛び込み、ワーワーと声を上げて泣いた。
『ブルマさ、最高だ。オラ幸せだ…』
悟空の一連の行動が、ブルマの薬によるものだと思っていたチチは、泣きながらブルマに感謝した。
悟空は薬を一滴も飲んでないのだが、チチが知るのはまだまだ後の事…。
チチさんの場合
―おわり―