ささげもの

□白くて儚くて
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雪が降った。
たぶん私の最後の。
君は、嬉しそうに手を引いて行ってくれて。
奥底の悲しい、不安な気持ちさえ
君の笑顔の前では消えてくれた。
ただ、もうそれだけで十分だった。






『ブレイクっ
雪だぞ雪!』
『分かってますヨー
ホラホラ寒いでしょ、中入って』
廊下に出たとたんに
満面の笑みの君がいた。
そんな君は久しぶりで
笑いは隠せなかったけど。
『ブレイク
外・・・行かないか?』
『外・・デスか?
雪降ってますけどー?』
『だから、だろ?
仕事俺が全部してやるから!な?』
『・・・分かりました
でもそんなカッコじゃ
風邪、ひいちゃいマスよー』
ホラ、とさしだすマフラーは
器用な君の手作りで。
どんなマフラーよりも
どんなときも暖かくて。
君に抱きしめられてるみたいに。
『そしたらブレイク寒いだろーが』
『私を馬鹿にしてもらっちゃ・・・
こま・・・り・・・っへくちっ』
『な?
お前が風邪引くの嫌なんだよ
もう苦しむお前を見るのは・・・』
『・・・私だって
君に引いてもらっちゃ困ります』
『・・・じゃ、こうしよう』
ふわ、と首に巻かれたマフラーは
少しだけ君の香りがして。
君のほうを見ると
同じように首に巻いて
『ブレイクのにおいがする』
なんていうものだから。
『・・・っバーカぁ
早く外行くんでしょう?』
『そうだな』
何も違和感無く自然に握られた手。
君の当たり前という顔が
すごく、すごくうれしかった━

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