† NOVEL †
□闇夜の哀歌
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狩人は銃を引き抜いて、吸血鬼に歩み寄った。
敵を前にしているとは思えない、優雅な足取りだった。
吸血鬼はその姿に、彼女の父親を重ねていた。
ロワイエ・ベルモンドも、こんな風に近付いてきた。
それを、彼女が知ることはないが。
「ようやく見つけた。
よく七年も逃げ回れたな」
狩人はもう吸血鬼の目の前に立っていた。
何の感情も込もっていない目で――心が平然としていられる訳はないが、そうだとしたら、一流の役者だ――吸血鬼の顎に銃を突きつけた。
吸血鬼の方は、僅かに動揺していた。
狩人が言うように、この七年間、エヴァルトが狩人を避けていたのは事実だった。
昔渡したペンダント――あれをつけている限り、吸血鬼は狩人が何処にいるかいつでも知る事が出来た。
ペンダントを捨てたということか。
吸血鬼は苦笑いを浮かべた。
「余裕だな、ソルヴェーグ」
狩人の瞳に焔がちらついた。
「死ぬ瞬間も余裕でいられるか・・・・・・俺が見届けてやる」
次の瞬間、エヴァルトの前から狩人が消えた。
吸血鬼の目にも、その動きを追うことは不可能だった。
銃声が響き、エヴァルトの頬に深い傷を残した。