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□ファンタジー系小説書きさんに100のお題
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配布元
Aile d'ange



★マークは管理人が挑戦したものです。


1:序章
2:雨
3:気高い
4:剣
5:翼
6:水晶
7:時計
8:空
★9:敗北
★10:夢(悪夢)

11:混沌
12:死
13:混血
14:戒め
15:神
16:逃走
17:弱者
18:目覚め
19:嫉妬
20:傷(傷痕)
 
21:宣告
22:午睡
23:薔薇
24:キセキ(奇跡、軌跡、輝石)
25:闇
26:光
27:エンドレス
28:杖
★29:後継者
30:鏡

31:サディスト(サディズム)
32:自傷行為
33:王
34:慈愛
35:人形
36:白百合
37:色
38:音
39:共鳴
40:風

41:白い鳥
42:黒い鳥
43:紅い鳥
44:歌声
45:悲鳴
46:孤独
47:誇り
48:刻印
49:誓い
50:天使


51:螺旋
52:尊い
★53:畏怖
54:微笑み
55:陽だまり
56:いつか
57:喪失
58:親友
59:指輪
60:欠片

61:硝子
62:崩壊
63:敬礼
64:依存
65:蝶
66:緋色
67:漆黒
68:純白
69:瀕死
70:鳥籠

71:生まれ変わり
72:優美
73:不可思議
74:子供
75:獣
76:歓喜
77:休息
78:玩具
79:剣技
80:十字架

81:末裔
82:森
83:犠牲
84:覚醒
85:主
86:献花
87:古
88:偉大
89:封印
90:瞳

91:鎖
92:桜
93:嘲笑
94:守護
95:死神
96:継承者
97:孤高
98:太陽
99:月
100:終焉(終章)







【登場人物】


ルイス・カーティス

黒髪、漆黒の瞳、黒いロングコートの少年。
十代半ばにして天才奇術師。
身体能力が異常に高いのは吸血鬼と契約を交わしたため。


ソフィア

ルイスと同い年の歌姫。
本人は気付いていないが、呪歌の力を持っている。


ワルター・バーゼルト

ルイスが契約を交わした吸血鬼ヴァイス・バスティードを追っている魔物の狩人。
最近はルイスを追いかけまわしている。
ルイスを≪ル・バトルール≫と呼ぶ。


「あの人」
=吸血鬼ヴァイス・バスティードのこと。


グラウ・レーゲン

召喚師。
魔術連盟に復讐を誓っている。
一年前に追放を解かれて町に戻ってきた。


「魔術連盟」

魔術師の組織。
自治区グラナードに設置。
グラウ・レーゲンが加入を希望すると、召喚師は異端として、五年間の追放を言い渡した。
天才奇術師ルイス・カーティスはこの組織の人気者。
ちなみに、本物の魔術師はほとんどいない。
皆マジック(魔法なし)が好き。


ネーベルの奇術師:プロローグ



「準備は順調に進んでおりますよ」
 グラウ・レーゲンはそわそわと手をもみながら、ずる賢そうな目で今夜の訪問者の顔色を伺っていた。
訪問者――黒衣に身を包んだ魔術師は、手の中でワイングラスを弄ぶばかりで、一向に返事をしない。
しかも、独特の威圧感を周囲に発散しているので、レーゲンには魔術師がただ考え事をしているのか、それとも怒りを表しているのか、まるでわからなかった。
 レーゲンは思い切って咳払いをしてみた。
「今月中には全ての準備が整います」
「いや、一週間後だ」
 魔術師が発言したことに驚いたせいで、レーゲンはすぐに反応できなかった。
「一週間後……ですか? それは無理かと――」
「来週から三日間、魔術祭が開催される。その時に決行するのだ」
 有無を言わさぬ調子に圧され、レーゲンは気の抜けた返事をした。「はあ……」
 魔術師の目がぎらっと光った。
紫色の瞳の中で、瞳孔が獣のように細くなった。
魔法学の研究者なら、すぐに「黒魔術に深く入り込んだ者の目」と気づいただろう。
召喚師のレーゲンにも、それはわかった。
この男を怒らせることは、同時に身の危険を意味することだ……。
「お前のために助言してやっているのだぞ。お前が魔術連盟の者どもに仕返しをしてやりたいと言うから、力を貸してやったのだ。そのことを忘れるな。絶対に」
「も、申し訳ありません、マスター」
 魔術師は目を閉じ、細長い指先で瞼を押さえた。
次に目を開いた時、殺気は消えて、気だるそうな色が戻っていた。
「あの歌姫はもう捕まえたのか?」
「そ、それが……何度か使い魔を差し向けたのですが、逃げられまして。本人は気づいていないようですが、無意識に『呪歌』の力を使っているようですな」
 この、何でも他人事のように言う癖が人を苛立たせることに、レーゲンは気づいていないようだ。
「明日のうちに必ず捕まえておけ。あれ以上いい生贄はそうそう見つかるものではない……」
 魔術師は独り言のように言って、ワイングラスをテーブルに置いた。
そして、突然立ち上がった。
「どうされました?」
 レーゲンが驚いて尋ねた。
魔術師は何も言わず、窓に歩み寄った。
勢いよくカーテンを引き、窓を開け放った。
月の見えない晩で、下の方はぼんやりとしか見えないが、そこに崖しかないことはこれまでの訪問でわかっている。
それに、ここは屋敷の最上階で、足の踏み場になるようなものは何もない。
 しかし――。
 魔術師は考え込んだ。
カーテンを引いた時、確かに黒いコートの裾のようなものを捉えたような気がしたのだ。
「あの――?」
 レーゲンの声で、魔術師は我に返った。
「いや、何でもない。気のせいだ」
 魔術師は気を取り直して、再びソファに腰を下ろした。
念のために張っておいた結界には亀裂一つ入っていなかったため、魔術師が見過ごしたのも仕方のないことだった。
 しかし、屋敷の塔の上では、魔術師が見た黒いコートの裾が、静かに風に靡いていた。

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