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□魔法使いの憂鬱
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 レティシア・リヴェットは夕闇の中を疾走していた。

 魔術界のクイーンと国中から誉めたたえられている魔女。

 しかし、今はその称号が疎ましかった。

 リヴェットは杖を一回転させ、背後から飛びかかってくる追手を弾き飛ばしたが、またすぐに別の追手がやってくる。

 使い魔の執拗な追跡に、リヴェットは疲弊しきっていた。

 長時間走っていることよりも、先ほどの戦い――ボリス・ヴィンセントとの交戦で、リヴェットは思いのほか傷ついていた。

 突然現れた、自分よりも強力な魔術師の出現に、リヴェットは困惑を隠しきれなかった。

 この国に、リヴェットの右に出る者はいない。

 王室使えの魔術師の称号を女王直々に賜った時、リヴェットは確信したのだった。

 自分が最強の魔術師であり続けるであろうことを、少しでも疑問に思ったことはなかった。

 つい先ほど、ヴィンセントから逃げるまでは。

 リヴェットはため息をついて、自分の敗北を認めた。

 その瞬間、背に焼きつくような痛みが走って、リヴェットはついに倒れた。

 それは歴史書に残る、クイーンの初めての敗北だった。










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