† NOVEL †
□闇夜の哀歌
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しかし、それを拭う間もなく、狩人の短刀が肩を狙って閃いた。
――腕を切り落とす気だ。
吸血鬼はそれを避けて、狩人の腕を捕まえた。
腕を狩人の背中で拘束し、エヴァルトは息をついたが、飛んできた蹴り技をかわしたせいで手を放してしまった。
その時、エヴァルトは隙だらけだった。
わざとではなく、狩人から吸血鬼の胸は打ちやすい位置にあった。
それを見逃さず、狩人はエヴァルトに銃を向けて引金を引いた。
――速い。
エヴァルトは思わず笑みを浮かべた。
もう少しだけ、狩人の声が聞きたかった。
まあ、顔を見れただけでもいいか・・・。
しかし、銃声は鳴らなかった。
銃が、狩人の指をすり抜けて落ちた。
狩人の唇から血が溢れていることに気づくまで、しばらくかかった。
狩人が咳き込み始め、エヴァルトは立ち尽くした。
彼女は元々肺が弱い。
コートについた煙草の匂いからすると、彼女自身も吸っているのだろう。
「シリル」
近づいてくるエヴァルトを見て、狩人の顔が泣きそうになった。
「苦しいか?」
「ただの発作だ」
狩人はエヴァルトの伸ばした手を払い退けた。