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□闇夜のヴァンパイヤ
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月がその姿を隠す夜には、ご注意を。
「お嬢さん、一口貴女のその甘い血を分けていただけるかな?」
ふわり、足音もなく真後ろに立つ影。
優しげな声に、声をかけられたものは振り返る。
そして、彼の風貌に、スゥと、頷いてしまうのだ。
そして今宵も・・・彼に血を捧げる生贄が・・・
「・・・ラーク、最近ウチにばかり声をかけている気がするけど・・・何時から魔女の血も飲むようになったんだわさ?」
『別にあげるけど』と、振り向いたのはラミルだ。
と、言うよりも、此処はラミルとラークの家なのだ。他に人はいない。
「ラミルの血は甘いんですよ。矢張り魔力が強いからでしょうかね?」
「いや、知らないけど。魔力が強いなら、キュラでも・・・」
大人しく血を与えながら首をかしげるラミルに、ラークは口を開く。
「キュラは・・・ただでさえ精を取れなくて夢で命を繋いでいるのに、血を摂ってしまっては申し訳ないでしょう?」
「あぁ、そうだわさね。」
その言葉に、ラミルはコクリと頷いて、納得した。
それに何より、キュラは気分で男子になってしまう。
魔力が高くても・・・矢張り女子の方が良いのだと言うことは、ラークの心中に留めるとして。
「ラミル。ありがとうございました」
「ん?もう良いんだわさ?」
ラミルの手首を止血しながら、ラークは礼を言う。
「えぇ。軽い栄養を摂れば、後は他の食物で構いませんからね。」
その言葉に、『そうだったわさね。』とラミルは笑って、立ち上がる。
「さてと!それじゃぁ今から腕によりをかけてご飯作るわさ♪」
「えぇ、楽しみにしてますよ。」
きゅっとエプロンの紐を縛って、台所へと消えてゆくラミルに笑顔を向けて。
「今日の夕食はなんですかねぇ?」
血を貰う時よりも柔らかい『素』の笑顔で、ラークは呟いた。
End.
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