×
□望月の恒例行事
1ページ/2ページ
月が満ち満ちる晩には。
悪魔達にも、色々と起こるものなのです。
「ん〜・・・」
もぞもぞとベットの中で動く塊。
「寒い・・・」
外の寒さに、布団から抜け出せないラミルだ。
しかし、いつまでもそうしているわけには行かないと、ガバリと布団をはねる。
「〜〜〜っ!寒いっ!!!」
再び布団に潜ってしまった。
それから、暫くして。
「ラミル?ご飯が冷めてしまいますよ、ほら、起きてくださ・・・い」
小さくノックをして、ラークが部屋に入ってくる。
そして、ラミルの包まっている布団をはがし・・・固まった。
「ん〜・・・分かっただわさ・・・」
よいしょと体を起こし、ベッドの上で目をこするラミル。
ぼ〜っとしながら視線を上げれば、そこにラークの姿は無かった。
「すみませんっ!!///」
ドアの外で顔を真っ赤にしているラークに首をかしげ、暫くしてポンッと手を打つ。
「今宵は、満月だっただわさね」
そう、今宵は望月。
ラミルの魔力が最も強くなる日。
最も・・・ラミルだけではないのだが。
「いただきま〜す♪」
「どうぞ」
顔を洗って、朝食を摂る。
それが終わると、バッとマントを羽織り、何時もより長い髪をサラリとはらう。
「よっし!出かけてくるわさ!」
「行ってらっしゃい」
勢い良く飛び出したラミルを、ラークは見送った。
「ん〜♪満月の夜は気分が良いわさ♪」
何時もと違う、成人の体で、ラミルは今、夜空を泳いでいる。
「そうだ!」
何かを思いついた顔で、ラミルはスィーと箒をすべらせた。
「ジャック〜遊ぼうぜ☆」
「おう!」
ジャックの家に、ファームが遊びに来た。
何時もの、基本人型ではなく、犬の姿で。
「お〜、今日は満月か。ファームがワンコになってらぁ」
「オレは犬じゃねぇ!!」
ウガーと凄んで見せるが、その姿は何処からどう見ても犬。
そんなファームにジャックは笑う。
実は、満月の夜にはこの会話が恒例となっているのだ。
そして、もう一つ。
「ファ〜ム〜v」
頭上から降ってくる声。
その声に釣られるように上を見れば、そこには。
箒の上に立ち、両手を広げるラミルの姿。
そして、
トンッと箒をけって、ファーム目掛けて飛び込んだ。
「うわぁっ?!ラミル、落ち着け!!!」
ファームは叫んでみるが・・・もう遅い。
「わ〜いvふあふあ〜vvvファーム可愛いだわさぁ〜v」
「モガガガガッッ!」
ファームを思いきり抱きしめ、そのふわふわした毛並みに頬を埋める。
ファームはと言うと、目を回していた。
これらの事は全て恒例。
満月になると狼(いぬ)になるファームと、大人になってしかも魔力も倍増なラミル。
例えばどちらかの周期がずれていたなら・・・ファームはこんなに苦しがることはなかったかも、知れません。
ちなみに、ジャックはと言うと。
「ファームも災難だな!」
と、笑ってみていた。
「助けてくれよ!!」
「ふあふあ〜vv」
ファームの苦難は、この後、長による制止の雷が落とされるまで続いた。
End.
後書へ
戻る