×
□猫の呼び声
1ページ/2ページ
みゃぁ〜...
何処からか聞こえる猫の鳴き声。
一体何処から?
誰かを、呼んでいるの?
「ん?」
台所で夕食を作っていたラミルはその手を止める。
「どうしました?」
規則正しく続いていた包丁の音がやんだのを不思議に思ったのか、ラークが様子を見に来た。
「・・・集合がかかったんだわさ」
「集合?」
「・・・ちょっと行って来るわさ」
詳しい事は言わず、ラミルはエプロンを解いて部屋を出て行く。
「すぐ戻ってくるわさ」
「ちょっ・・・ラミル?!」
スィーと、箒をつかみ、夜の闇に消えていった。
みゃ〜ぉ
呆然とするラークの耳に再び、猫の声が聞こえた。
一方、ラミルはと言うと。
「ラミル!遅いですわよ?」
「ごめん!すっかり忘れてたわさ!」
全く・・・と、箒を片手に呆れる女性に、パンッと顔の前で手を合わせて謝っていた。
漆黒の髪を持つ彼女は、ラミルとは正反対の位置に住んでいる魔女。
名前はメリア。ラミルと違い、スラリと背が固い大人の魔女である。
今日は、魔女達の集まる月に一度の集会の日。
ラミルを呼んだ猫は、メリアの黒猫カルン。
「みゃぁ〜ぉ」
「カルン、ありがとうだわさ♪」
笑顔で手を伸ばしたラミルに、どういたしましてとでも言うようにカルンはその体を摺り寄せた。
「それじゃぁ始めますわよ!」
メリアの言葉に、他の魔女達も頷く。
そして始まる。
魔女達による、繊月夜の集会が。
自分達の住む地域に危険点が無いかの話し合いから、今後の対策。
そして、それがすめば、場は一気に宴の盛り上がりを始める。
「話し合いも終わったし、ウチは帰るだわさ。夕食作ってる最中だったからね」
「あら、もう戻られますの?相変わらず旦那思いな事で」
「旦那って・・・誰の事だわさ?」
本気で悩んでいる様子のラミルに、思わずメリアはずっこけた。
「この天然ボケは・・・」
思わず口が悪くなるが、本当に鈍いのだ。このラミルと言う魔女は。
「とにかく、ラークがお腹すかせてるだわさ。朔の日でもないのに街に血を求めに行ったら困るし、戻るだわ」
そういって、ラミルは箒にまたがって家へと帰っていった。
「ハァ〜・・・ラミルと会うと、いつもなんだか調子が崩れますわね、カルン。」
メリアの言葉に、まったくだというようにカルンは小さく鳴いて見せるのだった。
夜の闇に響く猫の声は、魔女達を呼ぶ、集合の声。
End.
後書
戻る