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□ふわりふわりシーツのお化けと〜
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まぁるいお月様一口齧って、ふわふわ、何処へ出かけましょう?
ふわり、ふわり。
真っ白な影が夜の街に映える。
ちらりと見える薄桃色の髪は月の光でキラキラ輝いて。
ふわり、ふわ。
何処へ行くの?
「あ・・・」
小さく声を上げた真っ白い塊。
その先には、黒いコートにとんがり帽子。
「ラ・・・ラミル・・・さん?」
オドオドと、小さな声で尋ねれば、振り向いた、大きなキャラメル色の瞳。
ビクッ
大きく、白い塊の肩が跳ねた。
「あっれ〜?そこを行くのはシエル君?」
「あ・・・ご・・・ゴメンナサイ」
くるりと踵を返した白い塊―シエル―
ラミルかと思ったその魔女は、最近街にやってきた見習い魔女―チョコ―で、シエルは名前を間違えたことを詫びると、まるで逃げ出すように、その場から去っていった。
「一体どうしたのでしょう?」
首をかしげるチョコは知らない。
シエルがこの街一の恥ずかしがりやだと言う事を。
シエルはとにかく人見知りが激しい。
そのため、移動中は勿論、大抵白のシーツを頭から被って行動している。
人見知りの激しいシエルの顔を見たことがあるのは、一番慕っているリースと、お姉さん肌のラミルくらいだ。
年の近いジャックやファームでさえ、話すことや遊ぶ事はあってもシーツを外した所を見たことが無い。
だから、街に来たばかりのチョコがシエルの声を聞けたのは、奇跡に近いのだ。
後日、ラークに会いにラミルの家を訪れたチョコはそのことを知り、新たに決意する。
「今度会った時は、絶対!ぜぇ〜ったい!お友達になって見せるのですよ!」
「ほどほどにしとくだわさよ?」
「私も、まだ出会い頭に挨拶を交わす程度ですしね・・・」
意気込むチョコに、ラミルとラークは苦笑いをしながらそう、付け加えたのだった。
End.
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