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□守護者
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悪魔達が住む世界には、東西南北を護る魔女がいる。
敵の侵入の少ない北の地は、(切れない限り)大人しく物事を解決させるラミルが。
水が多い南の地は、水を操る事に長けたものが。
敵こそいないが、仲間同士での紛争が絶えない東の地では、物事を収める事に長けたものが。
そして、最も敵の侵入が多い西の地は、好戦的で、戦闘力の最も長けたメリアが。
それぞれ護り、収めている。
彼女達は、力を乱用することなく、上手く使う者たち。
そして、――ヘタをすると長よりも――仲間からの信頼を得ている者たちである。
守護者
「主、西の森に、侵入者のようです」
「そう・・・わかったわ。」
片膝をついて、静かに告げたカルンの言葉に、メリアは立ち上がる。
そして、部屋の隅にかけてあったローブに袖を通して、告げた。
「行きますわよ、カルン」
「承知」
箒に跨るメリア。その箒の後ろに、カルンは本来の猫の姿に戻ると、ちょんと飛び乗り、目的地へと向かった。
「今回、輩の目的はどうやら人魚のようですわね・・・」
「みゃお、みゃ〜(は、何でも『永遠の若さ』を得るとか・・・)」
人魚の血は傷を癒し、その肉には不老不死―しかも永遠に若いまま―の力があるという。
カルンの説明を聞きながら、メリアは小さく溜め息を吐いた。
「不老不死のちから・・・ねぇ・・・私たちには関係のないものですけど。そんなに良いものかしら?」
「みゃ〜〜みゅ(さぁ・・・不死ではない一族の、誰か一人だけが不死になるというのは・・・そんなに良いものとは思えませぬ)」
「ですわよねぇ・・・」
もとより不死では無い人間が、不死になるということ。
それは、家族や恋人、友達までもが、自分を残して逝ってしまうと言う事。
「その辺り・・・解っていますのかしら・・・」
メリアの呟きは、カルンに届く前に風に溶けた。
「旦那さまっ!」
「良いから逃げるんだハニィ!此処は俺が食い止める!ハニィに手出しはさせない!」
目的地についてみれば、そこにいたのは、ラミルの地方の住民であるはずのティアと、その旦那、リック。
迫り来る侵入者からティアを護ろうと、その身を盾にしていた、
「・・・何故此処にティアたちが・・・?あぁ、シャオに会いに来たんですわね・・・」
「みゃ〜お、みゃ〜(しかし主・・・お言葉ですが、あの者たちにリック殿は見えていないのでは?)」
「でしょうね・・・さてカルン。私どもも参戦と行きますか」
「承知」
上空からその様子を見ていたメリアは、軽く会話を交わすと下へと降りる。
カルンはといえば、『参戦』と言うメリアの言葉を聞いたのと同時に箒から飛び降り、宙で一回転をしながら人型をとると、リックの前へと降り立った。
「カルン?!」
「リック殿、下がっていてください。此処は我と主が引き受けます。あなたはティア殿とシャオ殿を連れて安全な場所へ!」
「わ・・・解った!」
突如現れたカルンに、侵入者は驚いたように一瞬動きを止めた。
それは、リックも同じで。カルンはリックに声をかけ、リックがティアを姫抱きに、シャオの腕を引いて走っていくのを見送ってから、侵入者へと鋭い視線を送った。
「主が護るこの地は、何人(なんぴと)にも汚させはしない!」
数本のナイフを構えて、カルンは侵入者を片付けるべく、地を蹴った。
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