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□#1 〜4日目〜
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「・・・・・学校って、こんなに近いんですね」
「え?うん。ゆきさんの家からなら5分くらいでつくよ・・・?」

まだ門がしまっていた学校の前で、呆然としながらゆきが呟く。
いつも2時間かけて歩いているゆきとしては、まさか7時前に学校に着くとは思っても見なかったらしい。

反対に笑美は、どうしたら2時間もかけて学校に来れるか、そちらのほうが気になるらしく、目が点になっている。

「おや、あんた達、随分と早いねぇ、何かあるの甲斐?」

「「いえ・・・別に。ただ、家を出る時間を間違えてしまって・・・」」

校門を開けに来た用務員さんの問いに、二人とも同じ答えを返して、学校に入って行った。

カツンッ・・・カーンッ

廊下に、二人の足音だけが響く。

「何か変な感じ。誰もいない学校って」
「そうですね」

会話をしながら、さて。と、ゆきは悩む。

さて、一体如何様にして話を切り出そうか。と。

「あの・・・笑美さんは、『死』って、どう思います?」
「え?」

悩んでも良い考えは浮かばず、単刀直入に尋ねる。
聞き返してきた笑美に、矢張り唐突過ぎたか、と思っていたのだが、

「そうだなぁ・・・唯一自由になれる手段。後は・・・怖いこと。かな?」
「そうですか。私も・・・『怖いこと』だと思います」

思ったよりもすんなり返事が返ってきたことに少々驚きつつ、ゆきは相槌を返した。


――唯一自由になれる手段・・・か。実際、そんなに甘くないけど。

ゆきは思う。
死んでも自由になれるわけではないと。

死の後に残るのは、消滅と、更正。
特に自殺の場合、消滅してしまう事の方が多い。

ふ、と表情を緩めて呟く。

「それが貴方の・・・曾羅 笑美の、答えなのですね?」

「え?何か言った?」
「いいえ、何も。ところで、教室って遠いですね」

首をかしげた笑美に、話を変えるように尋ねて。
ゆきの後ろを着いて歩いていた笑美は、ゲッソリとして呟いた。

「・・・ゆきさん、学校内でも迷うんだ・・・」

ゆきのクラスは入り口から一番近い教室だ。
1階の職員室の前の廊下を曲がった所。

しかし、今二人が居る場所は4階。音楽室の前だった。

「・・・あら?」
「もぅ・・・教室はこっちだよ、ゆきさん」
「すみません・・・」

笑美はゆきに笑顔で手を差し出すと、今度こそ自分達の教室へと向かったのだった。

End.
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