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□#1 〜7日目〜
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「「彼女に・・・曾羅 笑美に、『生』を」」
口をそろえて、言い切った。
「承諾しました。お疲れ様、戻るなり、後始末をするなり、後は二人に任せましょう」
「「ありがとうございます」」
去って行く四季を見送って、二人は部屋を出た。
「どうして『生』を?」
「それは君だって一緒だろ、ゆき。笑美は何もしていないとぼくは見た。人の行為を無碍にするのはどうかと思うことはあるけど、恋愛感情に対してはその人の自由だからね」
春陽の言葉に、ゆきは頷く。
「そうですね。私は・・・あの笑顔が、もっと見たいから。死んでしまっては見れませんもの」
ちょっとした意地悪。
『死』なんていう逃げ道なんて、あげるものか。
もっと、生きていて欲しい。
だって、死んでしまうなんてもったいないから。
「それに、もう少しすればいじめっ子・・・学校長の孫は転校するしね・・・」
「そうなんですか?それは・・・良かった」
どこから情報を仕入れてきたのかと言うことは、ゆきに取ってはどうだって良いのだ。
きっと、原因である彼が居なくなれば、笑美の笑顔は戻ってくるだろうから。
そうしたら。
「学校が、楽しいものになるに違いないですね♪」
逃げ道じゃなくて、楽しいから。
だから学校に行くようになれば、それはとても嬉しい事。
きっとそうなるであろう近い未来を想って、ゆきは淡く笑む。
そして、一言呟いた。
「肩入れ・・・しすぎたのかもしれませんね・・・」
その言葉は、とても小さく。
隣に居る春陽に届く前に風に溶けた。
「ん?何か言ったかい?ゆき」
「いいえ、何も。さぁ、帰りましょうか」
春陽の問いかけに首を振って、ゆきは帰ろうとその腕を引いた。
「・・・そうだな。帰るか」
春陽もそれに頷くと、二人は、人込みに紛れて、見つけることは出来なかった。
End.
次に会うときは、あなたが本当に死んでしまうとき。
死神の選択は一度きり。
二度も見逃してもらえる事は、ないのだから。
精一杯・・・生きて。
また、会いましょう?
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