□裏ずきん
1ページ/2ページ

あまり必要の無い人物設定はコチラ

『昔々、真っ赤なずきんを被った、それはそれは可愛らしい女の子がいました。』


可愛がられて育った、純心無垢な可愛い可愛い赤ずきんは、絵本の中だけのお話。
私は、物心付いたころから銃を持っていた。

【裏ずきん】

朝、目が覚めたら基礎体力作り。
腕立て、腹筋、ランニング。

腕がなまらないように射撃の練習も欠かさない。

「おはよう、母さん。」
「あら、おはよう。」

それが終わったら朝食。

今、目の前で料理を盛り付けている母も、昔は私と同じ訓練をしたらしい。
時折、相手になってもらうこともあるけど、矢張り強い。

父親は、いない。

遠い国で戦力として働いているのだとか。

「ご飯を食べ終わったら着替えてきなさい。今日はお婆様のところへお遣いに行ってもらいますから。」
「は〜い。」

ご飯を食べながら、母の言葉に頷く。
祖母もまた、昔はマシンガンを肩から提げて向かい来る敵をなぎ倒したらしい。

要するに、私の家系の女子は皆そんな風に育てられるってことね。





「ご馳走様でした。」

食事を終えて私は着替える。

真っ赤なずきんに真っ赤なスカート。服の下にホルダーをつけて、銃を装備。

これは、私の戦闘服。
着慣れているから動きやすいし、何より赤は返り血が目立たない。
女の子らしいこの服装は、相手が油断する要素の一つ。

色々考えて作られたらしいこの戦闘服を、私は気に入っている。

何故届け物に行くだけで戦闘服に着替えなければならないのか。
それは・・・森に行けば直ぐ分かる。

「いってきま〜す。」
「行ってらっしゃい。気をつけるのよ〜?」

ニコニコと手を振る母。
私もそれに笑顔で手を振って、森へと向かった。



ガサッ

森に一歩足を踏み入れる。

――――ヒュンッ

その途端一斉に向かってくる、矢。
それを上に跳ぶことでかわして、私はホルダーに手を伸ばす。

ガゥンッガゥンッッ

矢を放っている人工機械目掛けて、銃を撃つ。

トンッ・・・

「フゥ・・・」

持っていたバスケットの中身を確認して、小さく安堵の息を吐く。

「良かった〜・・・バスケットの中身は無事だ。」

祖母の家に着いた時にバスケットの中身が崩れていれば・・・帰りの仕掛けはもっと酷い物になる。
だから、何が何でもこのバスケットは死守しなくては!

「こんなところでモタモタしてられない!」

私はそう呟くと、バスケットを抱えて走り出す。
片手に銃を握り締め。



ガゥンッ



襲い掛かってくる熊の足を狙い、狼の肩を狙い、取り敢えず殺さないように加減して打つ。
森の動物は祖母の飼っているペットなので・・・殺すとなにされるか分からないから・・・

病弱な割に怒ると怖いんです。私の祖母は。

必死に向かい来る動物を殺さない程度に足止めして、バスケットを抱えて、漸く私は祖母の家に着いた。

コン・・・コンコンッ

「赤ずきんです。」
「開いているよ。」

声をかければ祖母の声。
ドアを開けて、一歩。

ガクンッ

視点がズレル。
部屋に入った途端落とし穴。
咄嗟に縁をつかんで息を吐く。

今の衝撃で絶対バスケットの中身崩れた・・・なんて考える私は少しずれているのかもしれない。

「よっと。」

片手だけで体を持ち上げて、床に立つ。

「こんにちは。お婆ちゃん。はい、お土産。」
「ありがとう赤ずきん。」

それからは、銃の知識を学んだり、普通におしゃべりしたり。
幸い、バスケットの中身は崩れてなかったので、帰りは何事も無く帰ることが出来ました。

着替えて、夕飯を食べて、お風呂に入って。

寝る前にも戦闘の為の練習は欠かさない。

そのうち、私も戦場に出ることがあるんだろうか?
そんな未来を想像しながら、私は眠りに着いた。

『赤ずきんちゃんはお母さんと一緒に幸せに暮らしました。』

Happy End.なんて絵本の中だけ。

だけど・・・
私は今の現状で満足しているから、幸せってのは・・・そうね、合っているわ。

幸せの形なんて、人それぞれでしょう?

End.

後書
































































次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ