□3
1ページ/1ページ




『殺人許可証』それを、彼は持っているといった。
それ即ち、それを生業にしているという事。

シャルドは少し考えて、口を開いた。

「それなら・・・手伝ってくれる?その、仲間の核を取りにいくのを・・・」
「勿論。」

キールは快くそれを受けた。




キールは走っていた。
アイスの屋敷へシャルドをつれて行くために。

その顔は常に笑顔で、疲れを感じさせない。
その後ろから、シャルドがついてゆく。軽やかにステップをふむように。
それでもキールに遅れはとっていない。彼女は速かった、全速で駆ける彼女は風の如く。
その足があったから、ハンターから逃げ切れたのだろうと言う事は、簡単に想像できた。

「ついたよ。此処が、『宝石よりもプランツの核が好き』なアイス譲の屋敷だ。」

「此処が・・・」

無駄に広い庭。大きな家。
煌びやかに装飾された屋敷は、目に毒なほどだと、シャルドは心中で思った。


「さて、此処からが問題だ。」

キールは笑顔を消して言う。

アイスの屋敷には防犯対策が数多く施されていて、容易に侵入する事はできない。と。

その言葉に、シャルドは表情を変えることなく『平気』と呟く。

「平気。侵入はお手の物だから。・・・何処に核が保管されているか、分かる?」
「あ、あぁ・・・」

シャルドの言葉の意味を理解しかねているキールは、それでも質問に答える。『アイス譲の部屋だ』と。
それに頷き、部屋の大体の場所を尋ねるが、それには流石のキールも首を横に振った。

「流石にそこまでの情報は持っていないよ。」
「そう・・・まぁ良いか。しっかり付いて来てね、キール・・・」

そう言うと、シャルドは地を蹴った。




「ちょ・・・ちょっと待ってくれよ・・・」

ゼーハーゼーハー

肩で息をしているキールはもう笑顔を作る気力もないようだ。完全に疲れ果てていた。

「だらしないわよ・・・?」

対してシャルドは全く平気そうだ。呼吸の乱れは一切ない。

二人はすでに屋敷の中に入っていた。
監視カメラは磁石で狂わし、足音は決して立てず、見張りの人間は隙をついて潜り抜ける。
そうして、警備の状況から推測したアイスの部屋。
鍵の掛かったその扉は物の数秒で開け放たれた。

「シャルド・・・なんか手馴れてないか?」
「・・・だって慣れっこだもの。鍵を開けるのも、防犯装置を潜り抜けるのも、相手の隙をつくのも・・・」
「な・・・慣れっこ・・・?」

彼女は断じて怪盗などの類ではない。
ただ、彼女の両親は厳しい人で、シャルドが門限を過ぎても家に帰ってこないと、家中の防犯装置は作動され、鍵をかけられたのだ。
幼い頃からシャルドは家に入るために家宅侵入(こうゆうこと)が得意になってしまったのだ。

今の彼女にはありがたい思い出だろうが。
そんな彼女の家庭事情など知る由もないキールは『慣れっこ』の単語に頭を悩ませるのだった。

開け放たれたドアから一歩中に足を踏み入れる。
その部屋には、予想した以上の核があった。

濃淡様々な緑の核石。
所々に見える紅や山吹はとても珍しいもの。一体どれだけのプランツの命を奪ってきたのだろう・・・ぼんやりとシャルドはそんなことを思う。

「誰です?!そこに居るのは!!」

突然掛かる声。振り向けばそこにいたのは・・・

「こんにちは、アイス譲。」
「あら・・・キールじゃないの。」

この部屋の主、アイスだった。

つづく…

□後記□
おかしいなぁ・・・予定ではこの話で終わるはずだったのに・・・
もう一度だけつづきます。
何でアイス譲がキールの事を知っているのかも、恐らく次で。
思いがけず、シャルドが怪盗(もどき)に。
厳しい両親・・・厳しすぎるでしょ?!ちなみに、例に漏れずフィルも家宅侵入大得意でした(笑)

家宅侵入=こういうこととお読みください。

それでは、お楽しみいただけたなら幸いです♪

06.09・24

戻る






































































06.09・24

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ